2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

5 ロボットオタク 2

当時の戦闘用ドロイドは米軍の「多脚戦車」タイプ"が主流だった。 ガトリンク砲や小型ミサイルを搭載し戦車大の大きさで4本の脚で地球上のあらゆる場所を移動できる。米陸軍はその「戦車」の代わりをしたドロイドと歩兵を中心に構成されていた。米国民がロボ…

5 ロボットオタク 1

「家電街」は家電やパソコン、ドロイド、それらの関連書籍を扱った店が集中した商店街だ。もとより「家電街」という呼び方は古臭く今では人々は「電脳街」と呼ぶ。それが本来の電脳という意味とかけ離れていても。 その電脳街の人ごみに同化するように一人の…

4 恋愛相談 3

ある日、みのりが務めているゲームセンターの前で人影が行ったり来たりしているのが見える。入りたそうにも思えるし、逃げたそうにも思える。よく見ればその姿は井川だった。 何度かそういう光景を見ることになった。 みのりはそれを躊躇いの様にも受け取っ…

4 恋愛相談 2

「デートとかもまだなの?」 みのりとみどりは歩きながら話をする。 「うん。そういうのって男のほうから誘うものなの?」 「…井川君がそういう人じゃないなら誘ってもいいのかも?」 「そういう人じゃないって?」 「異性に積極的じゃない人…とか」 「あー…

4 恋愛相談 1

みのりが家まで帰る途中の道すがらに前方をあるくみどりの姿を見つけた。どことなくいつものみどりの印象と違って俯いている。ひょっとしたら人違いではないかと注意しながら、顔を見てみる。みどり本人だ。 「こんにちは、どうしたの?元気なさそう」 「あ…

18 討伐令 8

風雅は考えていた。 その漆黒は明らかにデータが存在しない事によるエラーの表示だった。だが、風雅の知る限りはシステム内でその様なエラーがあっさりと表示される場所はない。ただ、何者かがハッキングをしているなら話は変わってくる。 「漆黒の闇にNoDat…

18 討伐令 7

風雅達が最初にその神殿に入った時と違って、進入後に記憶が消えてしまう事は無くなっていた。そして神殿の奥へと進んでいった。何故なら後ろからオーク達が追ってきていると思っていたからだ。だが、ある時ふと後ろから追っ手がまったくこない事に気がつい…

18 討伐令 6

再びナブのラッシュが始まった。 右フック、左ストレート、右ストレート。最初こそナツメグはそれらを一つ一つ防いだり交わしたりしていた。だが、次から次へと繰り出されるそれらの攻撃を防ぐだけのパワーがナツメグには無かった。 「波動をコントロールす…

18 討伐令 5

ナブは驚いた目をしていた。ナブが驚いた目をするのを部下のオークも見ていた。それはナブの気合いが戦力の一部になっていた旅団に取っては致命的な出来事だったのだ。 何かの間違いではないか。ナブはそう思ったのか、額に汗を浮かばせながらも再び2度目の…

17 討伐令 4

『如月、聞いてるか?』 砂から起き上がった風雅の頭の中に青井の声が響く。 『ええ』 『相手は八つ裂き旅団のナブだな。とにかく逃げろ。ゲーム得意な奴のアドバイスだ。あと、ナブは魔法が効かないし剣も少ししか効かないから倒そうと思うな。今お前が死ね…

17 討伐令 3

ナブの前に立つナツメグ。 二人の体格差は誰がどう見ても「巨人に立ち向かう小人」だった。だが、ナブは何故かその小さな小人に対して軽くあしらうような素振りは見せなかった。あと少しで風雅のトドメがさせる程に締め上げていた腕の力を落として、そのまま…

17 討伐令 2

暗く冷たい神殿内から太陽がギラギラと照りつける砂漠へと足を踏み出す風雅達。忘却の神殿の仕掛けを解除し、外に出られるようになったのだ。 「とりあえず女王に報告しよう。次のタロットのカードが輝いて、文字が浮かび上がっているんだろう」 たまたまタ…

17 討伐令 1

シハーの聖都バベルから東にわずかに進んだところに、砂漠の色とマッチした迷彩柄の布を用いたテントが並んでいる。時折、そこを人間が出這入りするが、全てがオークが魔法で化けているものだった。そこは、アルタザールから風雅達を追い回していた「八つ裂…

3 否現実の人 7

みのりは井川春樹を知っている。 井川はみのりの勤めるゲームセンターの常連客だった。 みのりの勤めるゲームセンターでは3種類のゲームを扱っている。 一つはネットワークロールプレイング。一つは卓上ゲーム。最後の一つは恋愛シュミレーション。 殆どの会…

3 否現実の人 6

料理を作り終わって、それを二人で食べ終わって、夜風が静かに吹き込んでくるその部屋でみのりとみどりの二人はテレビを見ていた。 またみどりはみのりの顔を見てから言う。 「でも、眼鏡しててもモテそう。守ってあげたいって感じだもん」 「あはは。そうな…

3 否現実の人 5

みのりはみどりと2人で食べる分の食事を作っていた。 作り方は誰から習ったわけではなく、すべて本で勉強したものだった。 中華・和食・洋食、3冊の分厚い料理専門書を買ってきて2日ですべてを暗記した。そしてそこに書いてある作り方どおり一分の狂いも無く…

3 否現実の人 4

みのりはふと、料理を作りながら木村一家と出会った時の話を思い出していた。木村一家はみのりにとっては家族のような存在だった。 彼の本当の家族は別にいるが、みのりが思う「家族」というイメージ、みのりが望む「家族」というイメージから掛け離れていた…

3 否現実の人 3

「あ、お帰りなさい〜」 みのりがアパートへ戻るとそこに居たのは隣の部屋に住む一家の1人娘だった。犬を連れていてみのりを見ると尻尾を振りながら飛び付こうとする。 「こら!」 少女は小さく怒鳴ると犬の首から伸びるロープを引っ張る。 「今散歩に言って…

3 否現実の人 2

「あ、あの、菅原さん」 突然口を開いた守山。それに少し驚いてみのりは向き直す。 「あ、はい?」 「前から思ってたんだけど、何でこんなところをバイトに選んだの?」 「あ、それは、よく知っている店だし…」 「え?でも菅原さんを見かけたことないな…ずっ…

3 否現実の人 1

バイト先ではみのりは小さな話題を生んでいた。 ビルの一角にある小さなゲームセンターに出入りするのは男だけだ。以前までは店員も全員男だった。それは扱っているゲームが男性向けのものばかりなのが理由だ。 そこにみのりが店員として働き始めたのだ。 最…

2 普通の人へ 3

湖小山市の中心街に小さなゲームセンターがある。 みのりはそこにいた。 男だったときは客として出入りしていた場所。深夜から朝にかけて、街に人通りが少なくなる時間に出入りする。ゲームにハマって有り金を全部注ぎ込んだこともある。 今では店員の1人と…

2 普通の人へ 2

ボロアパートの前にはみのりの部屋から出された荷物が積み重ねられ、業者がその荷物をダンボールで梱包していた。業者が不思議がるほど、少ない荷物。一人暮らしなら必要な冷蔵庫などもない。 それもそのはず、みのりの部屋には最初から暮らすために必要な電…

2 普通の人へ 1

川上村のウイルス騒動から3週間が過ぎた。 県道を塞いでいたバリケードは撤去された。 それらのバリケードから少し離れた場所に築かれた「人のバリケード」つまり、マスコミ達は一斉に川上村へ雪崩込んだ。しばらくの間、マスコミに執拗なインタビューは川上…

1 脱皮 5

鼻をつく腐臭で秀人は目が覚めた。それは何かが腐った時に発する臭い。それは動物性の肉が腐った時の臭い。 硬く、冷たい感触が彼を襲う。どうやら秀人は床で寝ていたようだった。 (身体が軽い…?) 普段は100キロを超える体重を支えていた秀人だったが、ま…

1 脱皮 4

ベッドの上には血や肉片がベットリと付いていた。激痛は肉を剥がし、血を吹き出させているように思えた。そんな状況を見せつけられたら原因が何であれ、誰でも死を覚悟するだろう。 (このまま死んでしまいたい…こんなに苦しいなら) 朦朧とする意識の中で彼…

1 脱皮 3

大学生である吉村秀人は管理人の老人を覗いてこのアパートの唯一の住人だった。他の住人が引越して去っていくなかで彼だけがそこに残る理由は彼の部屋にあった。 部屋入るとまず目に入るのは魔法少女ミミの等身大人形。 キャンペーン用にアニメグッズ販売シ…

1 脱皮 2

数人の兵士と医療ドロイド、そして川上村の人間が路地を周回していた。 「この辺りは最近になって廃屋になった場所だよ。さっきの山本さんのところだけだったかな。住んでるのは」 地図と住民一覧を照らし合わせながら兵士は確認した。 一覧には「住んでいる…

1 脱皮 1

物語は最初へと戻る。 全ての始まり、川上村のウイルス騒動へ。 男性だけが病院に移送され、女性だけになった川上村。のはずだったが一部の男性は異常事態に気付かず、ただ不安の夜を過ごしていた。 白雲湖に流れる川、その上流に向かうと家はお世辞にも新し…

17 コンセッション・ハンター 6

東屋を前にして事務所の扉のそばにあるチャイムを押す。返答がない。次に扉をノックする。返答なし。再びノックするとようやく扉が開いた。 その瞬間、扉の間からタバコの煙と香りが咽るように噴出されてくる。思わず小山内は咳き込んだ。 「どちらさまです…

17 コンセッション・ハンター 5

「陸風会…電脳関係のトラブル起因でのユーザと企業との仲介・裁判を行う市民団体」と、小山内はPADタイプのネットワーク端末を片手に持ちながらその画面に表示されている情報を言葉にしている。 「へぇ。最近はそういうのがあるのか?」 「PADですか?『最近…