5 ロボットオタク 2

当時の戦闘用ドロイドは米軍の「多脚戦車」タイプ"が主流だった。
ガトリンク砲や小型ミサイルを搭載し戦車大の大きさで4本の脚で地球上のあらゆる場所を移動できる。米陸軍はその「戦車」の代わりをしたドロイドと歩兵を中心に構成されていた。米国民がロボットに抱くイメージ「大きくて強い」それが体現されていた。
だが芝川はまったく逆の発想だった。
芝川の開発したドロイド「デーモン」は背丈は人間の大人よりも小さい。4本足で犬のように走り回り、その速さは平地で最大時速60キロ。当時のドロイドには不可能とされていたジャンプが出来た。最大の特徴はデーモンには銃などの近接戦闘では不可欠な武器が搭載されなかった点だ。
その代わりにアームブレードと呼ばれる接近戦用のレーザー兵器と胸部に自爆用の小型爆弾、対熱・対衝撃バリア装置が背中に搭載された。
動物のように地を這うような吠え声を上げたり、自爆する寸前に発する断末魔の奇声は、戦闘に参加している人間の恐怖心を煽るために搭載された機能だ。撃てど倒せど次から次へと波の様に押し寄せるドロイドの大群、敵戦車や敵の大型ドロイドに害虫の如く纏わり付き、アームブレードで分厚い鉄板を解体する。そして害虫は「体内」へと進入し宿主もろとも消滅する。
まさに悪魔だった。
その悪魔を開発した芝川の名は世界中に知れ渡った。