5 ロボットオタク 1

「家電街」は家電やパソコン、ドロイド、それらの関連書籍を扱った店が集中した商店街だ。もとより「家電街」という呼び方は古臭く今では人々は「電脳街」と呼ぶ。それが本来の電脳という意味とかけ離れていても。
その電脳街の人ごみに同化するように一人の男が歩いている。
芝川武。
その名前は日本の多くの人には知られていないが軍関係者では知らないものは居ない。日本だけではなく大戦時の相手国の兵士すらその名前を知らぬものはいないと言われるほどだった。
「日本人は闘う民族ではなく造る民族である」
その言葉を裏付けるように戦時中は大量のドロイドが生産された。武器を取らず、ドロイドを造ることで戦勝国となった。後に"悪魔の軍隊"と呼ばれ世界中のマスコミを中心に非難される事になる。
日本の兵器メーカーの一つ「柏田(かしわだ)重工」に勤める芝川武は若くしてドロイドの開発者で才能を開花させた一人である。彼がマッドサイエンティストと呼ばれるのは戦闘用ドロイド開発に由来する。