サイバーパンクとしてのメイドインアビス考察

メイドインアビス見ました。
面白かったので漫画版を全巻見てしまいました。
で、考察でも見ようとググったのですがアビスの謎そのものに対する考察はありませんでした。これは放っておいても作者が語るから待ちましょうって意味なのかな?私は待てないので、自分なりに解釈した「アビスの謎」と今後の展開予測を書いておこうと思います。
ただ、これはメイドインアビスが「サイバーパンク」にカテゴラズされていると仮定した場合です。
まずはサイバーパンクについて語らなければなりません。
さて、とりあえず以下の作品のネタバレがありますので、嫌な方はここで中断してGoogleなりに戻ってください。

このコラムの中で定義するサイバーパンク

Wikiを見る限り非常に広義の意味だったので、私の中でのサイバーパンクをまず定義しようと思います。
メイドインアビスはご存知の通りグロシーンがあります。が、グロシーンだけならGUNTZなどもありますが、GUNTZはサイバーパンクではないと定義します。GUNTZでは主人公や敵も、みんな自分の命や血肉を大事に扱うからです。
例えば攻殻機動隊でも主人公の草薙素子は全身義体(サイボーグ)ですが、草薙はサイバーパンクではありません。なぜなら彼女は事故で自らの身体を失ったためにサイボーグ化せざる得なかったからです。
銃夢ではどうでしょうか?登場人物は全員身体の一部をサイボーグ化していますし、サイボーグ化していないと思われてた生身の人間ですら実は脳みそを抜き取られ廃棄されて代わりにICチップが入っていました。これはまさにサイバーパンクの金字塔でしょう。
ざっと複数の作品を語っただけで、私が言いたいことがなんとなくわかったと思います。これらを定義する言葉が今の所、「サイバーパンク」しかないのです。つまり、サイバーパンクとは、「自分や誰かの命や肉体を誰かの自分本位な理由によって非常に低価値に扱うストーリーを含めた作品」です。
私達が住む世界ではサイボーグもないし、一部のやばい人達を除いて肉体や命は尊いものという価値観の上に生きています。そういう人達がこれら「サイバーパンク」を見ることで感情を揺さぶられ傷ついたり怒ったり感情移入を他の作品よりも激しく行う、そういう手法の一つだと思ってください。
海外でメイドインアビス銃夢が非常に人気なのはスプラッター要素やホラー要素があるわけではなく、これら価値観の齟齬をチクチクとつつきまわすストーリーだからです。
メイドインアビスサイバーパンクのルールに則ってストーリーが進むと定義した上で、アビスの謎や今後の展開予測をコラムとして書こうと思います。

超文明の崩壊がアビスの誕生である

今、オースの街がある場所はもともと太古の超文明の重要な拠点でした。オースの街やアビスから出土される様々な品はオーパーツばかりなのがその理由です。
超文明では優れた技術がありました。
簡単に言うと天空の城ラピュタ的なものです。
ただ、宮崎駿作品にはないのはそれら超文明は高度に発展した技術で物質世界と精神世界の行き来すら行ってしまっていたというところ。宇宙の理すらも壊してしまう「時間を制御する装置」などがあることや、それらの道具を利用するために人の魂から作る白笛が使われていることからも、すでに進んではならない「心と魂」の領域まで進んでいたと考えられます。
これら様々な宇宙の理を破る装置を作り出すものを「リアクター(炉)」と仮定します。
このリアクターの動力は人間の魂。正確には高度な知性を持った動物の魂です。白笛がそうであるように、延長線上に魂があるのは推測できますね。
リアクターは人の命を利用して様々な理を破るものを生み出していました。内部では命を消費する動きと命から目的の装置を作り出す二つの力が作用していたと思われます。そう、メイドインアビスで頻繁に登場するアビスの呪いと祝福です。
他国に戦争を仕掛けて捕虜となった者達を使って、実験をしたり装置を生成したりしていたと思われます。ところが…このリアクターの外壁がある事故(または事件)で破壊されてしまいます。
そして膨大な理を壊すエネルギーは重力に影響され、縦の方向へと広がりました。制御が効かなくなって物質をブラックホールよろしく吸い込んだのかもしれません。オースの街があった中心部に存在していたであろうリアクターを中心として星の重力の中心であるコアめがけて崩壊し、街を飲み込み、大量の人間の命を吸い取り(のちの「お祈り骸骨」)巨大な穴が現れました。もちろん、超文明は後の文明に引き継がれることはありませんでした。みんな死んだからです。
これがアビスの穴の誕生です。

リアクターの再稼働と「夜明け」の関係

一つの文明を丸ごと消滅させたリアクターはまだ稼働していました。
しかし2000年が経つと稼働を停止します。
「夜明け」とはアビス最下層に稼働しているリアクターの上から下へ向けて吸い取る力が失われて光が届かなくなり生物が死に絶える「夜」が明けること…すなわち、リアクターにエネルギーである人間の魂が投入されることを意味していました。アビス内で2000年おきに生え変わる植物の話もこれから来ています。
お祈り骸骨が2000年おきに大量に発生するのはリアクターに命が投入されたタイミングと重なります。骸骨の数が少なくなるのは多くの冒険者が穴に自ら入った場合でしょう。

白笛達の思惑。不動卿の「不動」の意味

ボンドルドはある程度アビスの秘密を知っているようです。
彼は「次の2000年」と言いましたが、この大災害を乗り越える為にはアビスの祝福を手に入れてナナチのような姿にならなければダメなようです。
では一方でオーゼンが半ば諦め気味に「アビスを離れて生きてはいけない」と言いました。
白笛達はアビスの秘密を知っていて、自分の身の振りを決めていたのでしょう。
ボンドルドについては2000年おきの大災害を見届けること、オーゼンはアビスと共に滅ぶことを選んだように思えます。ライザについてはこの大災害を止めようとしているのかもしれません。
また、オーゼンがライザの白笛について聞かれた際に手に入れた場所を正確に説明しなかったことから、オーゼンがライザから取り上げたのでは、と仮定しています。
オーゼンの主義ではこのまま2000年毎の厄災を受け入れる、と決めている感があります。そしてライザとその部分で対立したのでしょう。なぜなら、リアクターの動作を止めることはアビスがアビスでなくなることを意味していて、それは探掘家達の未来を壊すことになるからです。オースの街の人達、自分の命をも引き換えにしてもアビスを未来に残そうとしているのでしょう。

さて、そろそろ終わりにしましょう

あくまで私の勝手な推測でストーリーの未来を描いてみました。
このままの通りになったら面白いですねww
この次の世代に向けて街一つ消耗して、命を元に装置が再稼働する…というストーリーは伊藤潤二大先生の「うずまき」にあります。といっても、あちらは誰も得をしないのでサイバーパンクではなくホラーなのですが…。