2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

142 必要悪 6

恭二の葬儀は終わった。 丹波のオッサンは自分が前に行っていた通り、淡々と葬儀に参加していた。費用は全部丹波のオッサン持ちだった。 恭二の子供には身寄りは無かったからしばらくは丹波のオッサンが引き取る事になった。いずれ恭二の子供は児童保護施設…

142 必要悪 5

江田は俺に言う。 「こんな事をしても何も変わらない。お前は何も分かってない」 ここにきていよいよ… 「命乞い?」 俺の問いに対して、無表情のまま男は言う。 「命乞いなどするものか。俺はこの世界に足を踏み入れてからいつでもこうなることを想定してい…

142 必要悪 4

『大暴れ』する場所は同じ区画にある別のビルだった。 既に警察の車両が取り囲んでいて、その間をヤクザどもは車で逃げようとするもドロイドやら警察車両に阻まれている。 「ドロイドバスター・キミカだ」「本物?!」「本庁に言って来てもらったのか?」「…

142 必要悪 3

跳ね飛ばされて奴との間に出来た距離。 これだけの距離が離れているとエントロピーコントロールの射程外になるらしい。皮膚が溶けるほどの高温だったはずなのに、射程外の今の場所ではまったくそれを感じさせない。 だが俺の周囲にはさっきあのドロイドバス…

142 必要悪 2

マナブはドロイドバスターへと変身した。 先程の火炎放射と比べ物にならないぐらいに息を吸い込む。腹が膨らむ。 おいおいおい!! この会場ごと丸焼けにする気かよ! 俺は身体をエビのように逸らした。イナバウアーだ。 マナブから発せられた火炎放射は確実…

142 必要悪 1

マナブはボクシングのソレに近いような構えで俺に向かってくる。 突き出すストレートやフックのパンチは手で交わす。 が、その時、コイツの放つパンチには熱が篭っているのがわかった。エントロピーコントロールで自らの拳の周囲の温度を上げているのだ。も…

141 ファイト・クラブ 10

恭二は死んだ。 あのラーメン屋には彼の息子が待っていた。 まだ、待っていた。 もう親父は帰ってくることはないのに。 親父の死を伝えたのは丹波のオッサンだった。 オッサンは子供にはわからないだろうに、丁寧に借金は全部返済されただとか、お前の銀行口…

141 ファイト・クラブ 9

恭二と『学』の対戦の日がやってきた。 これが終わると、少し日を明けてから俺と恭二、または学のどちらかが戦う事になる。結局これの繰り返しだ。 俺なら手加減ができる。 俺が負ければ恭二の借金が返せる可能性もある。 だから恭二がこの戦いで勝たなけれ…

141 ファイト・クラブ 8

「おいてめぇ!どういう事だ?!」 待合室の中で丹波の怒鳴り声が響く。 待合室に居たほか2名(ヒロミとマユナ)も驚く。 「どういう事って、こういう事さ」 と俺はガムを噛みながら言う。 「本気で殺れっつたよなァ?!」 俺に掴みかかる丹波のオッサン。 …

141 ファイト・クラブ 7

「殺れ!殺っちまえ!」 ロープ外から丹波のオッサンが叫ぶ。 試合の最中だった。 目の前にはタイ人のキックボクサーだ。 こいつも日本に何かしらの希望を持ってきたんだろう。 金が目当てだと言っても、そもそも貧乏な出なのだからわらにでも縋る思いだった…

141 ファイト・クラブ 6

その日は俺の出る試合は無かった。 その為か、ファイト・クラブのお客さんどもで俺の試合を期待していた連中はそのまま帰っちゃう人まで出てくる始末だ。どうやらここは賭けなくとも入場するだけで金を取られるらしいからな。金を取られた挙句にキミカの試合…

141 ファイト・クラブ 5

小さな女の子の勝利に会場は沸いた。 しかし、賭けをしていた連中は渋い顔だ。 特にヤクザのお偉いさんのような連中は、まさか俺のような女子高生が勝ってしまうとは思ってもみなかったのだろう。倍率だって均等じゃないはずだ。かなりの大損になっただろう…

141 ファイト・クラブ 4

さっそくなのだが、試合が開始されるようだ。 俺達が案内されたのは小さなバーのキッチンの奥。 そこは待合室のようになっている。まさかこんなバーが地下格闘技場への入り口だとは誰も思うまい…。 さっそくヒロミやマユナは喫茶店の位置を持っているハンデ…

141 ファイト・クラブ 3

「おいおいおいおいおい!!誰が店のガラス窓まで壊せっつたんだよ!あーあー!!!店の前にある車まで滅茶苦茶じゃねぇか!!」 ヒロミは俺の肩を掴んでガタガタ揺らしながら叫んだ。 身長が140センチかそこらしかない小さな女の子である俺は高級ダッチワイ…

141 ファイト・クラブ 2

東京・新宿に到着。 地下格闘技というぐらいだから地下にでも行くのかと思って俺はまず地下鉄を目指そうと言った。 しかしこれにはマトリの問題児2名も寒そうな顔をしている。 「いや、地下ってついてるからって地下ってわけじゃねーし…」 と俺の行為を寒い…

141 ファイト・クラブ 1

年明けのある日だった。 ケイスケの家の居間には2名の客人が居た。 土下座をしていた。 厚生労働省・麻薬取締部こと『マトリ』の例の問題児2名…折原ひろみと笹波まゆなである。 ヒロミのほうは普通に土下座を、マユナはまるで自慢するかのように土下座の体勢…

140 戦車の洗車 5

砂浜があった。 そしてそこにはビニールシートが4枚敷かれている。 それぞれのシートの上に美少女が4名、寝転がっている。 俺、そしてマコト、メイリン、ソンヒの4名が。 今は12月だった。 ほんの10数メートル離れたら12月の冷たい風が吹く。ヘタすれば雪も…

140 戦車の洗車 4

俺とマコトは南国気分を味わっていた。 マコトのエントロピーコントロールで南国になった10数メートル四方のエリア内、多脚戦車型タイプのドロイド『タチコマ』の背中の上で。 そんな俺達の隣を、ガソリンを補充しに来た人達や、ドトォールの客がチラ見して…

140 戦車の洗車 3

さむいさむい。 まるで雪国にいるようだ。 ガタガタと震えて倒れていたが、さすがにここに寝転がっていると眠くなってくる。眠ってしまったら死んでしまうと誰かが言ってた。俺は寒くて眠くなるのは人がまだ冬眠とか出来てた時期の記憶が遺伝子に組み込まれ…

140 戦車の洗車 2

洗車場と銘打つものはいくつも市内にあるのだが、どれも車を洗うための場所であって戦車が入れるようなスペースはない。仮に俺が無理にキミカ部屋から転送したとしても周りの建物をブチ壊しながら登場するだろう。 で、俺が目をつけたのはドトォールが併設さ…

140 戦車の洗車 1

年明けの2日目。 相変わらずクソ寒い朝が訪れた。 確か今日からスタバがオープンしてたっけ?では、さっそくMap信者でドヤラーの俺が活動を始めますよ、っと。いつものように机の上に置いてあるMBAを手にとって異次元空間へと放り込んだ、その時だった。 『…

139 白子のコミケ 8

俺とマコトは今日の任務を終えた。 だからさっさと家に帰りたかった。 コミケで買えるであろうアニメグッズの大半には興味がなかったし、コミケ限定モノにも大した価値が見いだせなかったからだ。 「ケイスケェ…任務終わったよ。帰ろうよ」 と、ケイスケに言…

139 白子のコミケ 7

コミケ会場にスタッフ用の小さな休憩室がある。 その一つを貸しきって取調室としてもらった。 さっきぶっ倒れたメガネのデブな売り子さんが意識を取り戻してから、その取調室に入れ、対面にはミサカさん、脇には俺とマコトがいる、という構図で話を進める事…

139 白子のコミケ 6

コミケ会場に降り立つ俺、マコト、そしてエルナの3名。 「す、凄い、空を初めて飛びました!感激ですゥ…」 目を潤ませながら俺の手を握って喜びを表すエルナ。 「それで…どこで情報を知ったの?今回の作戦にドロイドバスターが参加するって話」 「えっと、ピ…

139 白子のコミケ 5

俺とマコトはコミケ待機行列の前にいた。 …つもりだったのだが、ここは別の行列のようなのだ。そう、行列の遥か先には仮設トイレが並べておいてある…つまり、これはトイレ行列ということか。 トイレに行列かよォ…。 田舎育ちの俺にはトイレに並んで入るとか…

139 白子のコミケ 4

「あーもう、なんだか気分が悪くなってきた」 俺とマコトはコミケ会場の外へと出て行った。 師走の冷たい風が青空の下に流れる。 晴れてよかったと誰かが言ってたけど、冬って晴れてる時のほうが曇ってる時よりも寒い気がしなくもない。 ドロイドバスターに…

139 白子のコミケ 3

俺とマコトというドロイドバスター2名がコミケ会場内を歩きまわっていても「あ、なんかドロイドバスターのコスプレしている人がいるゥ」程度でしか見られてないようだ。 誰もが忙しく開館前準備をしている。 「この辺りがドロイドバスターの同人誌かな?」 …

139 白子のコミケ 2

どうしてケイスケが今年のコミケに行くときに喜んでいたのかわかったよ。 コイツ、普段は並んでいたんだけれど、今回は警察特権でヘリで一気に会場に入れるからだ。そして有名ブースに並んで一番乗りする気だ。 ヘリの下に見えるコミケ会場は、もう人がゴミ…

139 白子のコミケ 1

年末のこの時期はネットでもコミケの話題でもちきりになる。 俺が普段から通ってるVipper板(2ch)でもコミケで捉えられた面白い話題が一杯転がっていて、冬休みはこたつの中でネットしながら忙しくコミケを楽しむ人達を遠目に見ているのが楽しかった。 今年…

138 石見圭佑 6

「ケイスケは映画のチケットとテロが起きるタイミングから推測して、俺があそこでテロに巻き込まれるって思ったんだな…」 テロを止める事はケイスケには出来なかった。 それはイジメられてた自分が、そしてその時のクラスメート達が、イジメを止める事が出来…