2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

165 気にならない転校生 8

生徒達も、先生達も集まってきてる。 体育倉庫の周辺はお祭り騒ぎだ。もうお店を出したら儲けが出るんじゃないかっていうぐらいに人が集まってきてる。 クッソォ…俺の腕のせいだってバレたら大変だぞおい。 しかも倉庫の中から「ひぃぃいぃ」という叫び声の…

165 気にならない転校生 7

放送設備がスピーカーから流す音は全校へと流れている。 しかし、どうも音だけでは無いらしく、教室からは悲鳴や非難の声のようなものも聞こえてくるのだ。 たまたま音楽室でもその音が聞こえてきたから俺達はそこへと入った。そして、目の当たりにしたのだ…

165 気にならない転校生 6

廊下を走り回る義手。 俺の身体から分離したそれは自らの意思で動き、しかもその『意思』は何故かどっちかっていうとイタズラのほうに向けられてて、既に悪魔のソレと化していた。 …例えばソレは女子の足首を掴んだり…掴まれた女子はもうパニックになって失…

165 気にならない転校生 5

放課後。 授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。 それは帰宅部所属の俺にとっては競技開始の合図だ。 その一挙手一投足全てが帰宅に注がれなければならない。 そしてその動き全てに一分の無駄もあってはならない。 その無駄が積み重なって家に帰る時間が…

165 気にならない転校生 4

ソンヒは教材データがインストールされているPadを持ってくるのを忘れたのか、それとも先生がそもそもソンヒに渡すのを忘れたのか、手続きがうまくいってなくて発注する事すらされてないのか、とにかくソンヒは午前中の授業は机の上に何もおいてない状態で受…

165 気にならない転校生 3

ケイスケは最初にソンヒが入学してきた時に気付いたっぽい。 ソンヒは言わずもがな過去にアンダルシア学園に喧嘩を売ってきた連中が雇っていた雇われ喧嘩屋的な位置づけになっており、ケイスケはそのソンヒがなぜ学園に入学できたのかを調べてみるなどと言っ…

165 気にならない転校生 2

朝の会が始まった。 ケイスケが入ってくるとクラス全体を見渡してから、 「えっと、今日は皆さんに新しいお友達を紹介するにぃ…不本意ながらァ」 なんて言い出す。 転校生? ってどこにいるんだ? そういえば廊下の方から転校生の姿がチラチラと見える…けれ…

165 気にならない転校生 1

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 俺は飛び起きていた。 「キミカちゃん!大丈夫かい?!」 マコトが駆け寄ってくる。 そう、ケイスケの家、俺の部屋で迎えた朝に俺は飛び起きたのだ。 別に怖い夢を見たとかじゃない。戦争帰りの人が「まだ俺の戦争は終わ…

164 ジャーナリズム 5

俺は家に帰っていた。 マコトもケイスケも俺の無事を泣いて喜んだのち、俺の腕が無くなっているのを見て驚いてそのまま意識を失う結果となっていた。 ただ、ケイスケ曰く腕は培養液の中で新しく創りだすから問題はない、しばらくの間は片手だけでオナニーす…

164 ジャーナリズム 4

…。 意識を失ってたのか? まだ俺は生きてる…みたいだ。 「…ミカ!」 「キミカ!!」 タエが制御するアンドロイドの叫び声が聞こえる。 気がつけば俺は橋桁の下へと落下していた。 それを見下ろしながら叫んでいる。 ゆっくりとだが意識が回復してきていた。…

164 ジャーナリズム 3

トラックの荷台に着弾んする俺。 さっき腕を切り落としたばかりだから、痛みでグラビティコントロールの制御が狂って、ちょっとだけ着弾時に衝撃を和らげられなかった。 トラックの荷台にはタエが転送したと思われるアンドロイドが数体、上空警戒をしていた…

164 ジャーナリズム 2

言うが早くだ。 小鳥遊がエリア内に反乱軍の部隊が転送されてきていると言うが早く、さっそくジガバチに似た姿の中華ジガバチ・ドロイドが反重力コイルの独特なエンジン音を鳴らしながら、俺達のトラックの前方方向へと現れたのだ。 この俺でさえも血の気が…

164 ジャーナリズム 1

「やばい!思ったより近くに来てるぞ!ってか、もうビルの周りまで来てる!」 トラックの準備をしていたところに現れたタエはそう叫んだ。 「別働隊がいたのか」 幼女その1が言う。 「急ごう」 クマのぬいぐるみこと小鳥遊の一声でみな、トラックへ乗り込む…

163 三十六計逃げるに如かず 7

「おばあちゃん!」 俺が連れてきたエルナの祖母に歓喜の顔をするエルナ。 「みな、無事じゃったか」 そう言った祖母(幼女)にエルナが抱きつき軽々と抱きかかえる。 「死んだかと思ってましたァァァァ!!」 そう言って泣き崩れる。 「運良く安全なところ…

163 三十六計逃げるに如かず 6

重慶の街は酷く白い埃に覆われていた。 さっきまでは俺自身がモノローグで『普段よりも今が空気が澄んでいる』などとヌかしていたけれど撤回する。これは酷い。酷く埃にまみれている。 ちょうど金魚の糞が水槽の下部に溜まっているところで金魚が大暴れして…

163 三十六計逃げるに如かず 5

動物的な本能として、周囲に何らかの群れが現れ、それらが全員自分自身を攻撃対象として認識したのち、襲いかかろうとしている状況について、勝算の可能性について脳は確率が低いと計算結果をはじき出すだろう。 今、まさにその状態だった。 これがアミュー…

163 三十六計逃げるに如かず 4

「召喚ッ!!」 タエが叫ぶ。 目の前の空間がネジ曲がり水飴でも突き破るようにサイのタイプのドロイドが現れる。重量はともかく大きさはタチコマのような多脚戦車タイプのドロイドを凌ぐ大きさだ。 地響きを起こしながらもサイタイプのドロイドは突進する。…

163 三十六計逃げるに如かず 3

確かに誰も居なかった。 ついぞ1日ほど前にはここはデモ隊や住民でごった返していたのに、今、俺達の目の前には誰も居ない。誰も、生きているものは居ない。都市高速の道路から少し下へ見下ろすと何故、誰も居ないのかはっきりした。 「おいおい…つか、どう…

163 三十六計逃げるに如かず 2

基地を出発してからもう随分と経った。 小鳥遊は不知火の基地内に幾つかドロイドや多脚戦車を残しておくと俺達に話した。自分は自分で俺達に同行するわけでもなく、他の連中と一緒に次の基地…いや、隠れ家へと逃げるだけだ。 アカシック・レコードのテレパシ…

163 三十六計逃げるに如かず 1

翌朝。 朝食を終えてからさっそくミーティングだった。 『さっそく』という言葉を俺がモノローグで語ったのは、そうでもしなければこの基地から誰もいなくなるんじゃないかというぐらいに、昨日まで滞在していた兵士達が移動し始めているからだ。 ガラガラに…

162 脱出経路 6

司令室の隅のほうのテーブルで議論を重ねてるのはタエとあのガキだ。名前は…紹介されていないな。 でも俺の事は向こうは知っているわけだ。そりゃここで着いた時に銃を向けられなかったのはタエと俺と議員だけだからな。 司令と思しき60代ぐらいの男は俺に向…

162 脱出経路 5

俺とタエは作戦司令室のような場所に案内されていた。 ケイスケの家にあったような天井から下げるタイプと、テーブルの上に立体表示させるタイプの二つのホログラム・ディスプレイがある。 テーブルの上のほうにはこの基地と思しき建物の周囲を立体表示して…

162 脱出経路 4

トラックは朝から走っていた。 砂埃を巻き上げて。 凸凹の整備が行き届いていない道はもう通りすぎて、いよいよアスファルトによる舗装すらない道になっている。何年も雨が降っていないのかトラックの後方に砂埃が巻き上がる事は勿論だが前方ですらも巻き上…

162 脱出経路 3

中国製のボロトラックのエンジン音がマナーモードのケータイのような音を立てて響いている。 ここは中国大陸の奥地。 そして俺達はジプシーの一団のように街から街へと渡り歩いてその途中のなんら変哲もない道路の脇にトラックを停め、野宿をする。 いち早く…

162 脱出経路 2

翌日の朝早くからタエは元気に支度している。 クマのぬいぐるみである田中君を含めて3、4体のドロイドを召喚してさっさと買い込んでいる食料やらをトラックに詰め込んでいる。田中くんなんかは工事現場の監督のオッサンの格好で、頭には黄色のヘルメット、ラ…

162 脱出経路 1

結局、エルナは祖母を見つけたわけだが、エルナが日本に連れて帰ろうと説得するも説得には応じなかった。 それは俺にも理解出来たし、エルナ自身にもわかっているはずだ。理由が分かってはいるけれども、様式美として、家族だから一緒に日本に帰ろうと言うも…

161 アカーシャ・クロニクル 5

そういえば何故俺達はこの場所に来たんだろうか、などと誰もが思い出しそうになった時だ。 「ワシの家に寄っていくか?」 幼女その2がそう言ったのだ。 「それはそれは、ご両親にも悪いですし…」 なんてことをエルナは返す。 このまま俺達が家に行けば時間…

161 アカーシャ・クロニクル 4

「きききき、きみかさぁぁぁぁ〜ん!!」 エレベーターホールへと戻ってきた俺達をまず出迎えてくれたのはエルナの震え声だった。この薄暗い場所で幼女その1とずっと待っていたからだろうか。 「どうしたんだよ?」 「どうしたもこうしたもないですよォ!!…

161 アカーシャ・クロニクル 3

…という夢を見た。 俺は起こされたのだ。 いや、あれは夢なんかじゃない。 夢のようなはっきりと現実と空想を分け隔てている感覚とは違う。何故なら、今、幼女その2に揺り動かされている今も、視界の片隅に見えているからだ。 「び、びっくりしたぞ、一体ど…

161 アカーシャ・クロニクル 2

目の前にぐちゃぐちゃの肉塊がある。 密閉された試験管の中だ。 密閉された試験管内ではさっきまで一人の人間が入っていたが、今はもう人間だったのかすら怪しい、腐食した肉塊が転がっている。 しかし、こんなに近くにいるのに臭いが漂ってこないのは完全に…