164 ジャーナリズム 3

トラックの荷台に着弾んする俺。
さっき腕を切り落としたばかりだから、痛みでグラビティコントロールの制御が狂って、ちょっとだけ着弾時に衝撃を和らげられなかった。
トラックの荷台にはタエが転送したと思われるアンドロイドが数体、上空警戒をしていた。一旦はジガバチはトラックから離れた…おそらくは俺がグングニルの槍により大爆破をさせた為に何らかの理由で空を飛び続けれなかったんだろう。
ふらふらと荷台の上に膝をつく。
「キミカさん!」
泣いていたのだろうかエルナは頬を涙まみれにしていたが、俺を見るなり驚いて後部座席から荷台へと駆け寄ってくる。そして震えた声で言った。
「おいおい…マジかよ」
タエが制御しているアンドロイドも俺を見て驚いてる。
「う、腕が…」
震える声でエルナが言う。
「かすり傷だよ」
「全然かすり傷じゃないですゥ!!切断されてますゥゥ!!」
「これでかすり傷ならこれ以上なら何なんだよ!!」
その瞬間だった。
俺の身体がドロイドバスター変身前の状態に戻ったのだ。
気が緩んだからか?…いや、これは思いっきりダメージを受けた時に人間の姿に戻ってしまうっていうドロイドバスターの基本機能の1つだ。
なんとなく経験や感覚でわかる。そう、もう変身できたとしても、後1回かそこらじゃないか…?腕を切り落としたのは痛いな…。
「それはアレだ…もう培養液とかじゃないと戻らないぞ。あいつがいたら治すこともできるんだけどな」とアンドロイドが言う。
「あいつ?」
「小鳥遊だよ」
「治療の能力があるの?」
「あぁ」
身体は人間に戻ったが俺の腕は相変わらず元には戻らず、エルナがその腕に自分の袖の布をちぎって巻きつけている。
後部座席に乗り移った。
見れば運転しているのはタエじゃない…って、幼女その2が車運転してるぞ!!
っていうか、足届くのかよ?!
「ふっ、心配するなッ!ワシはこう見えても自動二輪免許を所持しておる」
「いやいやいや!それ車は運転できないから!」
後部座席にはタエが、普段は見せないような表情で安倍議員のお腹辺りを抑えているのだ。やっぱりさっきのガトリングガンの攻撃は…致命傷だった。
議員はお腹を撃たれていた。
直撃を食らっていたら死んでいるから、おそらく破片を食らったんだと思う。
タエは緊急的に治療を行っているのだ。…まぁ、素人のできる治療っていうのは血が出ないように包帯を巻きつけるぐらいしかできないけれども…。
「お腹が…痛いのだ…」
蚊の鳴くような声で議員が言う。
まだ意識があるだけいいかもしれない。
「心配すんなって。お腹は痛くても下痢じゃねぇし」
いやいやいや…下痢のほうがまだいいじゃないか…。
今、どの位置なんだ?
もういい加減疲れてきたぞ…。
俺はaiPhoneをキミカ部屋から取り出すと、CoogleMapを起動して現在位置を確認した。そこは大きな川が差し掛かる位置だ。そして、ゴールとなるビルは川を渡ってからしばらく走れば辿り着く…。この情報、やっぱり中国側も認識してるんだろうな。
(まずいことになったよ)
って、やっぱりそうかよ、ここでもまずいことかよ!
(何?!)
(前方の橋にジガバチが接近している。それにヘリも)
同時期にテレパシーを受け取ったのかタエが運転席に怒鳴る。
「やばい!橋に何かするつもりだ!!」
そうタエが叫んだのにもかかわらず、さらにアクセルを踏み込む幼女その2。
…て、おいおいおいおいおい!聞いてんのかよ人の話!!
「どうせ中国だから爆発でもするんじゃろうが!こう見えてもお前達と違って戦火を経験しとる、このワシをナメるな!中央軍に居た頃はソウルでヤンチャしておったわ!」
いや、中国違うし、そこ!
「橋が無くなるんだってば!」
俺も叫ぶ。
「無くなる前に渡ってしまえばいいことじゃ!」
さらにアクセルを踏む。
もうトラックが出せるスピードの限界まで来ている、140キロは出ているだろうか、デモ隊の連中を轢き殺しまくって血溜まりにしている。暴走トラックだ。さすがに耐え切れなくなったのかタエは後部荷台に居たアンドロイドを元の場所へと転送していく。
そのままのスピードで橋へと突入するトラック。
そしてジガバチは橋に接近。ヘリに乗った反乱軍兵がRPGを放つのとジガバチがミサイルを放つのはほぼ同時だった。
強烈な爆風が俺達の地面から突き上げるようにトラックを押し上げていく。もう火山の噴火口に突入したんじゃないかっていうぐらいに。見れば、目の前の橋も下から爆発してトラックはそれをジャンプ台にして空へと飛び上がったのだ。
宙に飛ぶトラック。
しかしそうしている間にも橋が爆発し、下からさらに押し上げられる。
煙と粉塵で前が見えない。
いや、その粉塵の隙間に一瞬だけ、一瞬だけそれが見えた。
クソしつこいジガバチ野郎の身体の一部が。
トラックの横をかすめるように、ニアミスして通り過ぎて行く。
俺は片手で印を結んで窓の外にセカンダリを召喚。
そしてセカンダリの方でリッパーをもたせた。
トラックが弧を描いて地面へと着陸するその目の前に現れた、しつこいジガバチ野郎をリッパーの電磁カッターが青白い光を立てて切断していく。
切断が終わると同時に、リッパーを転送し、そしてセカンダリも転送した。
この間、わずか2秒。
そして轟音を立ててトラックは着陸した。
何故か…俺だけが外へと投げ飛ばされて…。
「クッソッ!!」
「キミカ!!」
タエが再びアンドロイドを転送して、俺の元へと駆け寄ってくるのが一瞬見えたのだが、俺は俺でもう粉砕された橋から川へとダイブしそうなギリギリのところで片腕だけで何とか捕まっている状態になってしまった。
「早くきてー!!」
俺は叫んだ。
って…さすがに…片腕だけじゃ力が…。俺が手を放してしまうのと、タエの召喚したアンドロイドの男が俺の手を握りそこねる瞬間は同じだった。