2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

177 代表代行 6

『スティーブは死んだ、ってどういうことなの?』 再び質問が、今度は俺に向けてだ。 『いや、その…』 俺もしどろもどろになる。 追い打ちをかけるようにジライヤが言う。 『辻褄としては合う。キミカとコーネリア両名が共同して外交官を殺害し、その代役と…

177 代表代行 5

ようやく帰国してから世間を賑わせていたのは、中国のクーデターの話でもなければ日本の参戦でもなく、記者会見の時に登場したアメリカ代表の姿で会場に紛れ込んでいたスパイである。 左翼はこぞってスカーレットこと蓮宝議員にインタービューを行って、誰も…

177 代表代行 4

会議の内容でなくても、コーネリアがそれっぽい話をすればいい、と俺は言ったものの、正直不安になってきた。 コーネリアは本当に関係ない話をしそうだからだ。 スティーブ・アンドロイドの制御は俺からコーネリアへと移った。 スティーブは俺達と話してる時…

177 代表代行 3

ようやく味覚が正常な状態に戻った時、おそらくは吐いてからその状態に至るまでの間、ずっとお世話係のアンドロイド達がテーブルの掃除をしてくれていたのだろう。 もうそこにはあのアメリカ代表のスティーブの姿は無く、乞食のようにがっついて食べてる偽ス…

177 代表代行 2

翌朝。 最終日の朝だ。 つまり、これからはスティーブに誘われて変な建物の変な施設まで護衛しに行かなくてもいいし、スティーブが襲撃に巻き込まれて死んだことを気にするまでもなくなる。 つまり明日から平和になるという未来が見えてきた日。 部屋にはカ…

177 代表代行 1

俺とコーネリアとスティーブそっくりのアンドロイドは香港の街の喧騒の中に紛れ込んでいた。とりあえず、俺達が居た場所から離れたかった。色々と問いただされるとボロが出るからだ。 「イイデスカ?屋台デ一緒ニ食事ヲシテイタンデス」 「わーった。わーっ…

176 深淵を覗く者 5

フロアに飛び回るカラスを撃ちまくる俺。 どれもヘカーテのコントロール下にある、物質変換能力によってそこらに転がっている物が動物に変換されたものだ。なんら虐待ではない。 その一方で重力波を検知した俺はその方向に向けて神経を集中する。こういう時…

176 深淵を覗く者 4

コーネリアがドロイドを生成する前に、俺はロシア製ゴリラ・ドロイドを始末する為に銃撃をブレードで弾き飛ばしながら突撃する。 下から上へと一撃、右から左へと一撃、合計2回の斬撃を1秒内で放ち十字の傷をつける。ドロイドはプスプスと音を立てて前屈みに…

176 深淵を覗く者 3

コーネリアが叫んだ場所に向かって俺は走る。 コーネリアの奴が面白いものだと叫ぶのは大抵、本当にゲスい視点からして面白いものだ。例えばリンクを開くとブラウザいっぱいに交通事故で死亡した人の肉の塊が広がっていて俺は思わず叫び声をあげるような、そ…

176 深淵を覗く者 2

重慶にあるソレと構造がよく似ている。 俺達は廊下の突き当りにある4、5メートルはある巨大な扉を前にしていた。そして電磁ロックが掛かっている事がわかったスティーブはあの重たそうなスーツケースの中から配線をいくらか取り出して電磁ロックの下部へ接続…

176 深淵を覗く者 1

護衛してくれと言っておいて先頭を歩いているのは他ならぬスティーブだった。前日に俺と二人で研究所跡地に言った時に同じく、彼は自身の危険を顧みない性格のようだ。 ただ既にその性格が災いして1回死んでいる…。 …はずなのだけれど、何故かスティーブは今…

175 ビジネスの話をしましょう 4

会合は中国の内戦を日本とアメリカが手伝うという着陸点を目指して進められた。兵器の提供に始まって爆撃の支援、広報…つまり、マスコミに戦争を正当化させるシナリオを流す事、そしてアメリカやその脇で利益を得ていた日本が待ち望んでいる、戦後処理につい…

175 ビジネスの話をしましょう 3

劉老子は長々と中国語で話し始めた。 後追いでアンドロイドが翻訳する。 「世界は平和になったとマスコミが言ってまわる。しかし、戦火は途絶える事をしらない。今、こうしている間にも世界中の様々な場所で戦闘が、戦争が起きている」 さらに続けていう。 …

175 ビジネスの話をしましょう 2

俺達が通されたのは今までの国家間会談では登場しなかったような、会議室とは思えないような部屋だ。 巨大なフロアの壁には映画館のスクリーンを思わせる巨大なモニターが設置してあり、中国南部を中心にした地図、ドローン・ドロイドが撮影したであろう国境…

175 ビジネスの話をしましょう 1

中国でも南側はわりとマスコミが自由に動けるようで中国や台湾、日本、そしてアメリカ、ロシアやフィリピン、インドネシアにマレーシアと、アジア各国のマスコミが勢揃いしていた。 日本もお馴染みの左翼系マスコミが中心となって中国様のケツの穴でも今から…

174 スーツケースの男 10

なにはともあれ、俺はスティーブが目の前で死んでいるという事実を知りながらもそれを隠蔽し、コーネリアとスカーレットの精神的な揺さぶりにも耐えた。今でも手や足が震えている。 ようやくホテルの部屋に戻って来た俺は冷や汗でベトベトになっていた服を脱…

174 スーツケースの男 9

「どうしたのよ、落ち着きなさいな」 スカーレットが俺の肩を揺さぶって言う。 俺は今、一瞬、衝撃波を食らって頭が麻痺して音や映像が遮断された状態になっていて、しばらくしてから目の前の景色が色を取り戻して、音が戻り、自我という意識が再生されはじ…

174 スーツケースの男 8

俺は頭のCPUをフル稼働させて、おそらくは使用率が100パーセントとなって全ての入出力を受け付けない状態で考えていた。 何を考えていたかと言えば、今日起きた出来事や、あの怪しげな研究施設のことだとか、ドロイドバスターについてだとか…そういうことで…

174 スーツケースの男 7

「ソウルリンクだよ」 ニヤニヤしながらスティーブは装置の前でキーを叩いた。 写真を撮るに飽きたらずデータも抜こうとしているのか? 「ソウルリンク…人や生き物の身体から伸びた管のような…」 「そうだ。来たまえ」 スティーブが見せたのは埃の積もったデ…

174 スーツケースの男 6

いくつかの地下鉄を乗り降りして移動する。 もう俺はそのメリケンを追いかけていくしか選択肢が無かった。どこに向かおうとしているのか、何をしようとしているのかがまるで掴めない。ただ、先頭をつかつかと歩いて行くのを見ると自分が護衛される対象になっ…

174 スーツケースの男 5

ドヤリング!! 人は何故ドヤるのか? 日常は主観的な視点から展開されて、他人からどう見えているのかは殆どの人が過ぎ去る時の中で置き去りにしている。しかし、ある時ふと今の自分を見つめなおす瞬間がある。自分は将来の自分をどう願ったのか、今の自分…

174 スーツケースの男 4

香港…中国のみならずアジアの中でも有数の巨大都市。 人口はWikipediaによれば1700万人。札幌と同じぐらいのサイズのエリアに札幌の4倍の人口がひしめき合っているのは近代建築技術をビル群に取り入れて再編させたかららしい。 天空にすら届きそうな摩天楼の…

174 スーツケースの男 3

「いつもいつもいいように利用して!!」 俺は怒鳴った。 男の時なら「いつもいつも良いように利用しやがって」と言っていたところだが、ケイスケによる言語規制で俺はツンデレ美少女が顔を真っ赤にして主人公に怒鳴る時のように、本人は怒っているけれど周…

174 スーツケースの男 2

座頭市も真っ青の居合抜きで戦闘行為の片鱗を見せつけると、とたんに側にいた側近2名が俺に向かって発砲する…が、それを見きって銃弾を全て弾き飛ばして、片方の銃をズタズタに斬って、もう片方は服を斬って素っ裸にして、最終的にはその真ん中に水戸黄門の…

174 スーツケースの男 1

今日は久しぶりに東京に来ていた。 コミケ以来の東京だったけれども、秋葉原でもなければ幕張でもないし、夢の島でもなかった。 六本木ハイビルディング。 50年ぐらい前から世界で初めて、を謳い文句にした超高層ビル群が並んでいる場所。確かビルの最上階辺…

12 優等生の憂鬱(リメイク) 7

普段どおりの帰りのホームルームの時間がやってきた。 その日も普段どおり、俺と相方の男子が壇上に上がってお知らせなどを読み聞かせていたりした。本来ならこの仕事だって担任であるケイスケがやることになっているんだけれども、ケイスケ曰く昼食を採った…

12 優等生の憂鬱(リメイク) 6

「藤崎紀美香です…よ、よろしくお願いします」 と、俺は俯いて自己紹介をした。 プールサイドへ立たされてゴリラのような…いや、人間で例えるのならアメコミのヒーロー(男)のような体躯の女子達に囲まれての自己紹介で緊張していた。人前で話すのは緊張す…

12 優等生の憂鬱(リメイク) 5

ひたひたとあるく廊下は、いつのまにか濡れたシート生地の感触が足の裏に響き始める。プールに来てるんだな、という感覚。 デジャブというやつか。 子供の頃に家族と行った市民プールに似ている。 それから塩素の臭いやら、むわっとする暖かい空気…。 プール…

12 優等生の憂鬱(リメイク) 4

放課後、ナノカに連れられ…というか、逃げようとしたところを見つかって引っ張られ、強制的に水泳部のメイン陣地である室内温水プールへと連行されることとなった。 俺はあえて再び言わせてもらうが、中身が男の子でありながらも外側は2次元から飛び出してき…

12 優等生の憂鬱(リメイク) 3

俺はイライラしていた。 水泳部への編入が決まってしまったからだ。 どれもこれも、全部、俺がクラス委員長になってしまったところを起点にして始まっている。エロゲで言うところのクラス委員長ルートになってしまっている。まるでクラス委員長の可愛い女の…