2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

17 コンセッション・ハンター 3

「ふむ…」 ところ変わってドライブスルーのハンバーガー店の前、刑事である東屋(祖父)と彼の部下である小山内の二人は店に入るところであった。店は二人が普段から昼食調達用として愛用している場所であった。 「どうかしたんですか?」 「孫から電話だよ…

17 コンセッション・ハンター 2

「電脳工学に詳しい人間…っていうと?」 青井が千葉に尋ねる。 「最初、今回の騒動を引き起こした輩が何かしらのハッキングの技術に卓越しているものだと考えていたんだが、それだけでは説明できない部分がある。記憶が消されたり書き換えられている事だ」 …

17 コンセッション・ハンター 1

サーバルーム内には青井と東屋と千葉の3人が待機していた。 風雅こと如月との通信が途絶えてから既に1時間が経過している。その1日の間、3人はサーバルームから離れることは無かった。 生命維持装置に繋がれた如月と豊川は相変わらず何事も無かったかのよう…

16 恋人 - Lover 8

竹下は心の中で叫び声をあげている自分に気付いた。今までの不安や悲しみが言葉にならずに叫びに変わっていた。自分の気持ちを吐き出してしまえればどんなに楽かと思った。その次の瞬間、自分は今までの心のうちを全部言葉にしていた。そして、ただ同じマン…

16 恋人 - Lover 7

「とりあえず、その…自己紹介しません?」 竹下は震える声でそう言った。 それは一つの賭けだった。 もし相沢が竹下の事を知っているのなら、相沢は竹下という人物を一人の人間として認識している。それは別に気になる女性というわけでなくてもいい、ただ同…

16 恋人 - Lover 6

相沢は竹下に話しかける事はなかったが、真面目に黙々と作業する様は竹下の中の理想の男性像そのままだった。 (私は好きな人がいても話す事すら出来ない…だから、私にとってはこんな感じの静かな人がいい) そんなある日の夕方、竹下は仕事を終えて家に帰る…

16 恋人 - Lover 5

女性の名は竹下マキ。 高校卒業後、街の小さな食品加工工場で働く。両親が住む家を出て彼女が一人暮らしを始めたのは一つだけ理由があった。 「一人自立して生活する」 彼女の掲げた目標がそれであった。 生まれつき身体は弱く、家と病院を行ったり来たりの…

16 恋人 - Lover 4

「何をするの?」 突然の相沢の行動に驚く竹下。 相沢はバッグから工具を取り出して広げた。それは彼が仕事でドロイドの部品作成に扱うもの。つまり電子部品に関する工具と機器だった。それらを使ってエレベーターの操作パネルの蓋を開いた。 「待ってるだけ…

16 恋人 - Lover 3

相沢は既に何度か緊急時の呼び出しボタンは押していた。 だが押せども押せども反応がない。 「クソ…電源が着てないのかな?」 「そう…なのかな」 仕方が無いので次に電脳の通信回線を開こうとした。 だが電波が届いていない。 「あれ?」 「どうしたんです?…

16 恋人 - Lover 2

相沢孝之、25歳。 小さな町工場でドロイドの部品を作る仕事に就くどこにでも居るような若者の一人だ。8時に家を出て工場で17時まで働き、帰りはコンビニでビールやつまみを買ってそのまま家に帰る。 マンションの一室に一人暮らし。特に欲しいものもなければ…

16 恋人 - Lover 1

忘却の神殿内部、4メートル四方の小さな部屋の中にヤンとジャスミンの二人がいた。いたというより、閉じ込められていた。 神殿内部で全員が忘却の効果により記憶が一時的に飛んでしまい、互いが知り合いだった事も忘れた状態になっている。そんな状況で何故…

13 覚醒と解放 5

「ったく、怪我人が出なくてよかったものの」 「すいません…」 崩れた建物の傍で説教を受ける雄輝。 シャオメイは破壊された建物の破片を見ながら考えていた。 (この短期間でこれほど成長するとは…もうちょっと時間が掛かると思っていたが。ひょっとしたら…

13 覚醒と解放 4

「どうした?」 廊下からシャオメイの声がする。 「シャオメイさん、突然ドロイドが暴れだしまして、制御不能です」 「まさか雄輝のバカが何かやらかしたんじゃないだろうな」 少し顔を青ざめさせる雄輝。 (やっべぇ…) 「何もしていませんよー」 とりあえ…

13 覚醒と解放 3

その日のうちにシャオメイに新技を見せ付けてやりたかった雄輝は、早速軍の関係者に電話を入れて家に迎えに来させた。軍病院に到着してから向かうのは射撃場だ。 いつもの射撃場だが、その日は普通と違う。普通と違う自分がそこにいる。 対戦車ライフルを装…

13 覚醒と解放 2

次の日は休日だった。 雄輝は朝のレンタルビデオ屋開店を待って後、入店してすぐさま教育系ビデオのコーナーを物色し始める。目に付いたのは『初心者』系のマーシャルアーツに関する入門ビデオだ。 ムエタイ、ボクシング、テコンドーに柔道、空手、拳法、そ…

13 覚醒と解放 1

家に帰ってから、雄輝はすぐに風呂に入った。 男だった時から服も下着もその辺りに散らかしながら風呂に入っていたのだが、その日はテレキネシスの能力で綺麗に脱いで綺麗に畳んだ。最近では宙に浮かすだけでなくそのような器用な事が出来るようになったのだ…

12 ショックウェーブ 8

次の日。 学校が終わって制服姿のまま再び軍病院の整地現場へと向かった雄輝。 まだ早い時間ともあって作業は行われている最中だ。一つだけ動かされていないシャベルカーがあったので、若干重さは軽いがそれを動かす事でその日の訓練とする事にした。 雄輝は…

12 ショックウェーブ 7

ドロイドの前で座禅を組む少女がいるという噂は瞬く間に軍病院内の関係者の間で囁かれるようになり、夕方、その女性が現れる時間となると軍や病院の関係者は駐車場へと向かうようになった。 向かった先には雄輝が座禅を組んで座っている様子があるのだ。 そ…

12 ショックウェーブ 6

35ミリの幅に力を調整する事は出来た雄輝だが、まだ課題は残っていた。 3トンの衝撃波を自ら作り出す事が出来ないのだ。 「3トンのものを持ち上げれないとダメなんだろうな」 単純な計算だった。 手ごろな岩が近くになかったので軍病院の周辺を散策する。 「…

12 ショックウェーブ 5

シャオメイの蹴り実演を見た後の雄輝の練習場は『軍病院の射撃場』ではなく、病院外の岩場となった。 岩場は軍病院が立てられる時に整地された場所の一部であった。杉の木々を潜り抜けた先に急斜面があり苔が生い茂り周囲には湿気が充満している。岩の中から…

12 ショックウェーブ 4

シャオメイの蹴りで粉砕された岩石の一部を宙に浮かべる雄輝。くるくると回転させてみる。岩石は炎を上げていて一部が熱で液体化している。 「これもテレキネシスの能力ですか?」 「テレキネシスの応用というか、別のパターンだな。普通は雄輝のように物体…

12 ショックウェーブ 3

「手本を見せてやろう」 シャオメイが岩の前に立つ。 「いいか。力というのは出すものではなくコントロールするものだ」 シャオメイが蹴りの構えをする。 「つま先にエネルギーを集中させる感覚で、それを分散させず回転させてターゲットに叩き込む。ただし…

12 ショックウェーブ 2

「どうですか?何かわかります?」 真剣な目でヒビを見ているシャオメイの背中に言う雄輝。 「お前は動きは早いが力がそれほど強いわけではないのだな」 「そう…ですね。男の時から腕相撲とかでも勝ったこと無いですからね」 「そっちの力じゃなくて」 シャ…

12 ショックウェーブ 1

弾丸に爪楊枝を当てるという芸を見事やってのけた雄輝は賞賛の拍手を与えられた後に、一人シャオメイに呼び出されて再び射撃場に来ていた。そこには射撃場を作る時に邪魔になった岩などがどこにも移動されずに放置してある。随分前からそうなっていたようだ…

11 リージョンサーチ 4

目隠しの訓練で周囲の状況を透視する力が増すとその範囲や精度がどんどん上がっていった。最初は歩くのに障害になるものを避けるための大まかなイメージだけだったが、それに色や質感、模様、ゴミまでも認識できるようになったのだ。 また、物体の僅かな動き…

11 リージョンサーチ 3

まず雄輝は引き出しの奥で埃をかぶっているトランプケースを取り出して、カードを机に並べた。何が裏に書かれてあるのかを当てるのだ。 「これはハートのエースで、次がクローバーの4、そしてこれがジョーカー」 次から次へと当てていく。雄輝の頭の中にはカ…

11 リージョンサーチ 2

雄輝は始める前から行き詰っていた。 だがシャオメイに会えるチャンスはそうなかったのだ。彼女は軍の別の仕事で忙しいらしく連絡もあまりつかなかった。ある日いつものように軍病院に訪れると普段射撃場にいる兵士の一人が雄輝にシャオメイが今日は来ている…

11 リージョンサーチ 1

シャオメイから最初に与えられた課題。 それは常人には理解しがたいものだった。 「対戦車ライフルの弾丸をテレキネシスで止める」 まずテレキネシスが扱えないとならないが、残念ながら雄輝はその能力を持ち合わせておりシャオメイも雄輝の可能性に期待して…

10 至高の業 4

「ずば抜けて高い…?何がですか?」 雄輝はシャオメイが言っている事が何なのか分らず質問した。 「既存の資料にこの能力を説明する言葉がない。だからどういえばいいのか分らない。ただ、この能力の特徴から私が勝手に名前を付けさせてもらうと『ヘッドレス…

10 至高の業 3

「物事は単純に考えないといけない」 シャオメイはそう言うと、そこらに転がっている石ころを『力』を使って宙に浮かせる。それを彼女の右から左へと水平に動かす。 「銃弾は右から左へと移動している。まずは右から左へと移動している弾を検知して、そこへ…