13 覚醒と解放 2

次の日は休日だった。
雄輝は朝のレンタルビデオ屋開店を待って後、入店してすぐさま教育系ビデオのコーナーを物色し始める。目に付いたのは『初心者』系のマーシャルアーツに関する入門ビデオだ。
ムエタイ、ボクシング、テコンドーに柔道、空手、拳法、そこいらの入門ビデオを一通り借りて家路に着く。
家に帰ると部屋にこもって早速それらのビデオを一つ一つ閲覧し始める。雄輝は気に入った技があれば、それを身体で再現させた。特殊な技術も必要でなければ、鍛えた身体もいらない。サイキックの能力であるテレキネシスを用いて自らの身体を動かすのだ。だから普通は人間の体力の限界で不可能になるフォームも編み出す事が出来た。
次に雄輝は普段から彼がよく通っている山に向かった。
川上村が見渡せる山で、地元の人間でも昔からそこに住んでいるものでなければ知らない場所である。
竹が密集している場所を見つけて、それらをターゲットにして蹴りや突きを入れる。さっきまでビデオで見ていたフォーム一つ一つを再現していく。普通の人間ならフォームは身体の筋肉の動きに覚えさせるが雄輝はテレキネシスの働かせ方一つ一つをフォームとして覚えていく。
通常は2トン程度の力を出せるテレキネシスだ。間違っても身体にその負荷を掛ければ自らの力で自らの身体を壊してしまう可能性がある。だから慎重に慎重を重ねて一つ一つの動きを覚えていく。
数日前まで蹴りといえばサッカーボールをキックするあの定番の蹴りだったがフォームに準えて、回し蹴りをした。それらを頭にイメージしてテレキネシスで自らの身体を動かす。通常は筋肉の限界点に到達してしまい出せないはずのスピードで空気を切り裂く蹴り。次にその蹴りがターゲットである竹に命中する時、命中点に一気に神経を集中させて、テレキネシスの能力を与える。
パンッ!と乾いた音が響いて蹴った部分が吹き飛んだ。竹はそのまま銃弾のように飛び散って、周囲の竹に破片が突き刺さった。そして蹴った竹と蹴りの方向にあった竹を数本まとめて弾き飛ばした。
「読めてきたぜ」
雄輝の頭の中はまるで目が覚めた直後のような清々しい気分となっていた。全身の感覚がむき出しになっている状態だ。全てが清々しく、新鮮に思えている状態だ。
そしてそれらの技の数々を生み出した記念に、一つ一つに名前を付けようとも考えたがあまりにも中2病的な名前になりそうなのでその案は自らで却下した。