13 覚醒と解放 1

家に帰ってから、雄輝はすぐに風呂に入った。
男だった時から服も下着もその辺りに散らかしながら風呂に入っていたのだが、その日はテレキネシスの能力で綺麗に脱いで綺麗に畳んだ。最近では宙に浮かすだけでなくそのような器用な事が出来るようになったのだ。
風呂に漬かりながら考えていた。
(なんで突然2トンの重量を持ち上げる事が出来るようになったんだ?)
思い当たるふしがあるとすれば、その日は『重いものを持ち上げる練習』よりも『自身の身体を高くまでジャンプする練習』をしていた。それは本来の目的からは大きく離れていた。つまり、遊んでいた。
ふと、シャオメイの言葉が脳裏に浮かぶ。
『力とは出すのではなく制御する』
雄輝がその日行った事は力を振り絞る事ではなく、小さい力の制御を何度も行った事だ。
「そっか…そういう事か」
全てがわかったわけではなかったが、少なくとも、一つだけ分った事があった。それは、何か重いものを持ち上げる練習よりも力の制御を行うほうが結果的に訓練になるという事だ。雄輝は次の目標を定めた。
「よし。格闘家ってのを目指してみるか」