12 ショックウェーブ 8

次の日。
学校が終わって制服姿のまま再び軍病院の整地現場へと向かった雄輝。
まだ早い時間ともあって作業は行われている最中だ。一つだけ動かされていないシャベルカーがあったので、若干重さは軽いがそれを動かす事でその日の訓練とする事にした。
雄輝は昨日のシャオメイの言葉を思い出して、最も重心に近い場所に身体を置く事にした。そしてふと、一番重心に近いのはシャベルカーの真上ではないかと思ったのだった。
「よし、あの上に上がって俺ごと持ち上げてみようか」
そして次に思いついたのは「自分自身にテレキネシスを働かせる事で空を飛ぶ方法」だった。どうしてそれをやってみなかったのかと後悔する雄輝。
早速座禅を組んで意識を自身の身体に集中する。
宙に浮かぶ身体。
「お、すげぇ!浮いてる浮いてる!」
だが思っていたよりしっくり来なかった。
確かに浮いてはいるが、飛んではいない。
「ん〜…違うんだなぁ…もっとかっこよくないと」
それから雄輝はジャンプする際に同時に身体にテレキネシスを働かせて跳躍力を上げるという試みをしてみる。最初は身長にタイミングを合わせて宙に浮かせていたが、慣れてくると意識を集中させずとも軽く10メートル上まで跳ね上がらせる事も出来た。
建物の屋上まで飛び跳ねるような様子を見せられた工事中の作業員達は作業を止めて雄輝のやらかしているパフォーマンスを見ていた。
「おっと。オーディエンスが増えてきたか。ちょっくらこの辺りで派手に浮かせてみるかな」
とニヤニヤする雄輝は、屋上からダイブし、地面にゆっくりと着地する。
「おぉ〜!」という完成と共に拍手が送られる。
次に雄輝は軽くシャベルカーの上までジャンプすると位置を補正しながら重心のある場所にゆっくりと着地。そしてそこで座禅を組む。
意識を真下、つまり自分とシャベルカーの重心に集中し、テレキネシスを働かせる。思ったよりも簡単に持ち上がった。以前はあれほど苦労したのにだ。
歓声と拍手の中、考えていた。
(え?近づいたらこんなに楽に持ち上がるのか?もしかして3トンぐらい余裕じゃねーのかな?)
雄輝は飛び降りるとゆっくりと地面に着地して、今度はその場所から座禅もせず、瞑想もせずにシャベルカーの重心に意識を集中させる。
軽く持ち上がった。
「え?なんで?」
何の前触れもなく、突然自身の力が大きくなっている事に驚いたのは他でもない雄輝自身だった。