ビギニング

13 覚醒と解放 5

「ったく、怪我人が出なくてよかったものの」 「すいません…」 崩れた建物の傍で説教を受ける雄輝。 シャオメイは破壊された建物の破片を見ながら考えていた。 (この短期間でこれほど成長するとは…もうちょっと時間が掛かると思っていたが。ひょっとしたら…

13 覚醒と解放 4

「どうした?」 廊下からシャオメイの声がする。 「シャオメイさん、突然ドロイドが暴れだしまして、制御不能です」 「まさか雄輝のバカが何かやらかしたんじゃないだろうな」 少し顔を青ざめさせる雄輝。 (やっべぇ…) 「何もしていませんよー」 とりあえ…

13 覚醒と解放 3

その日のうちにシャオメイに新技を見せ付けてやりたかった雄輝は、早速軍の関係者に電話を入れて家に迎えに来させた。軍病院に到着してから向かうのは射撃場だ。 いつもの射撃場だが、その日は普通と違う。普通と違う自分がそこにいる。 対戦車ライフルを装…

13 覚醒と解放 2

次の日は休日だった。 雄輝は朝のレンタルビデオ屋開店を待って後、入店してすぐさま教育系ビデオのコーナーを物色し始める。目に付いたのは『初心者』系のマーシャルアーツに関する入門ビデオだ。 ムエタイ、ボクシング、テコンドーに柔道、空手、拳法、そ…

13 覚醒と解放 1

家に帰ってから、雄輝はすぐに風呂に入った。 男だった時から服も下着もその辺りに散らかしながら風呂に入っていたのだが、その日はテレキネシスの能力で綺麗に脱いで綺麗に畳んだ。最近では宙に浮かすだけでなくそのような器用な事が出来るようになったのだ…

12 ショックウェーブ 8

次の日。 学校が終わって制服姿のまま再び軍病院の整地現場へと向かった雄輝。 まだ早い時間ともあって作業は行われている最中だ。一つだけ動かされていないシャベルカーがあったので、若干重さは軽いがそれを動かす事でその日の訓練とする事にした。 雄輝は…

12 ショックウェーブ 7

ドロイドの前で座禅を組む少女がいるという噂は瞬く間に軍病院内の関係者の間で囁かれるようになり、夕方、その女性が現れる時間となると軍や病院の関係者は駐車場へと向かうようになった。 向かった先には雄輝が座禅を組んで座っている様子があるのだ。 そ…

12 ショックウェーブ 6

35ミリの幅に力を調整する事は出来た雄輝だが、まだ課題は残っていた。 3トンの衝撃波を自ら作り出す事が出来ないのだ。 「3トンのものを持ち上げれないとダメなんだろうな」 単純な計算だった。 手ごろな岩が近くになかったので軍病院の周辺を散策する。 「…

12 ショックウェーブ 5

シャオメイの蹴り実演を見た後の雄輝の練習場は『軍病院の射撃場』ではなく、病院外の岩場となった。 岩場は軍病院が立てられる時に整地された場所の一部であった。杉の木々を潜り抜けた先に急斜面があり苔が生い茂り周囲には湿気が充満している。岩の中から…

12 ショックウェーブ 4

シャオメイの蹴りで粉砕された岩石の一部を宙に浮かべる雄輝。くるくると回転させてみる。岩石は炎を上げていて一部が熱で液体化している。 「これもテレキネシスの能力ですか?」 「テレキネシスの応用というか、別のパターンだな。普通は雄輝のように物体…

12 ショックウェーブ 3

「手本を見せてやろう」 シャオメイが岩の前に立つ。 「いいか。力というのは出すものではなくコントロールするものだ」 シャオメイが蹴りの構えをする。 「つま先にエネルギーを集中させる感覚で、それを分散させず回転させてターゲットに叩き込む。ただし…

12 ショックウェーブ 2

「どうですか?何かわかります?」 真剣な目でヒビを見ているシャオメイの背中に言う雄輝。 「お前は動きは早いが力がそれほど強いわけではないのだな」 「そう…ですね。男の時から腕相撲とかでも勝ったこと無いですからね」 「そっちの力じゃなくて」 シャ…

12 ショックウェーブ 1

弾丸に爪楊枝を当てるという芸を見事やってのけた雄輝は賞賛の拍手を与えられた後に、一人シャオメイに呼び出されて再び射撃場に来ていた。そこには射撃場を作る時に邪魔になった岩などがどこにも移動されずに放置してある。随分前からそうなっていたようだ…

11 リージョンサーチ 4

目隠しの訓練で周囲の状況を透視する力が増すとその範囲や精度がどんどん上がっていった。最初は歩くのに障害になるものを避けるための大まかなイメージだけだったが、それに色や質感、模様、ゴミまでも認識できるようになったのだ。 また、物体の僅かな動き…

11 リージョンサーチ 3

まず雄輝は引き出しの奥で埃をかぶっているトランプケースを取り出して、カードを机に並べた。何が裏に書かれてあるのかを当てるのだ。 「これはハートのエースで、次がクローバーの4、そしてこれがジョーカー」 次から次へと当てていく。雄輝の頭の中にはカ…

11 リージョンサーチ 2

雄輝は始める前から行き詰っていた。 だがシャオメイに会えるチャンスはそうなかったのだ。彼女は軍の別の仕事で忙しいらしく連絡もあまりつかなかった。ある日いつものように軍病院に訪れると普段射撃場にいる兵士の一人が雄輝にシャオメイが今日は来ている…

11 リージョンサーチ 1

シャオメイから最初に与えられた課題。 それは常人には理解しがたいものだった。 「対戦車ライフルの弾丸をテレキネシスで止める」 まずテレキネシスが扱えないとならないが、残念ながら雄輝はその能力を持ち合わせておりシャオメイも雄輝の可能性に期待して…

10 至高の業 4

「ずば抜けて高い…?何がですか?」 雄輝はシャオメイが言っている事が何なのか分らず質問した。 「既存の資料にこの能力を説明する言葉がない。だからどういえばいいのか分らない。ただ、この能力の特徴から私が勝手に名前を付けさせてもらうと『ヘッドレス…

10 至高の業 3

「物事は単純に考えないといけない」 シャオメイはそう言うと、そこらに転がっている石ころを『力』を使って宙に浮かせる。それを彼女の右から左へと水平に動かす。 「銃弾は右から左へと移動している。まずは右から左へと移動している弾を検知して、そこへ…

10 至高の業 2

「雄輝。お前の最初の目標は、対戦車ライフルから発射されたアダマンチウム弾をテレキネシスのみで止める事だ」 「いやいや、無理ですよ!」 シャオメイは冗談で言っている様子ではない。真面目に言っている分、まるで別世界の、例えばジャングルに住んでい…

10 至高の業 1

雄輝が案内された場所は建物に囲まれた中庭のような場所だった。 周囲はコンクリートの壁で覆われてゴルフの打ちっぱなし練習場にも見えるが『的』を見てそこが射撃場のである事を知る雄輝。射撃のテストを行うのは人間だけではないようで、数体のドロイドが…

9 就職 7

軍病院に到着後は正面玄関からではなく裏口から建物に入る。 今まで見た事の無い職員用通路を暫く進むとようやく待合室のような場所に通された。 5分かそこら待たされた後、シャオメイが現れる。 「どうした?デートにでも行った帰りの格好だな」 「いえ、こ…

9 就職 6

車で向かった先は浄水場だった。 雄輝が友達と一緒に登ったパイプラインもすぐそこだ。 普段は関係者以外立ち入り禁止の柵が設けてある浄水場の門が開いていて、車はそのまま中へと進む。そして整地された広い場所へと止まる。その下には何かしらの設備があ…

9 就職 5

昼過ぎに雄輝の家に客が訪れた。 黒のワゴンで男性が3名。身長は180はある体躯はしっかりとしたマッチョな男達である。彼らはスーツ姿にサングラスといういかにも怪しげな格好だ。それがシャオメイが遣わせた軍部の人間である事は人目で判った。 「雄輝、お…

9 就職 4

母親が居なくなった部屋でまず雄輝は服を脱いだ。 全裸になってから目の前の女モノ下着と対峙する。 しかもその下着は、高校生と年齢を考慮したとしても若干大人びている漆黒のブラとパンティーの上下だ。 「女が男モノトランクスを履くのは確かに変だ。だけ…

9 就職 3

昼頃、母親は朝に言ったとおりに買い物を終えて戻ってきた。食材とそれから雄輝の女モノの服を持って。 「普段着と、それから…制服も」 制服というキーワードで雄輝の脳裏にシャオメイの顔が浮かぶ。 (そういえば、俺、学校を中退しなきゃいけないんだよな…

9 就職 2

翌日。 雄輝は目が覚めると早速軍のあの中国人の女性に連絡しようとした。 と、その時母親が部屋に入ってきた。 「雄輝、あんた服とかどうするの?買ってきてあげようか?」 「服?いいよ自分で買うから」 「買えるの?」 ふと考えてみる雄輝。 (金はあるけ…

9 就職 1

軍病院を出ると、なるほど君津が言っていたとおり、病院の前はヘリポートと作りかけの道路が途中まであるだけだった。そして他のメンバーは居なくなっていた。先に帰ったのだろう。 (みんな『お誘い』があったのかな) だが雄輝はそれを聞こうとは思わなか…

8 軍病院 9

「話…?」 「今、高校生かな?」 「俺ですか?そうですけど…」 「進路は決まっているのか?」 「進路…ですか?まぁ、学校は進学校だから大学になるのかな…」 「どの大学を受ける?」 「まだ…それは決まってないですけど。っていうか、進路がどうしたんですか…

8 軍病院 8

雄輝は連行されたところまでは覚えていたのだがそれからの記憶は無い。 というよりも、眠っていたようだった。すっきりとした目覚めの後、雄輝は自分が刑事ドラマの中で見たような取調室の椅子に座っている事に気付いた。目の前には小さな質素なテーブルが一…