12 ショックウェーブ 1

弾丸に爪楊枝を当てるという芸を見事やってのけた雄輝は賞賛の拍手を与えられた後に、一人シャオメイに呼び出されて再び射撃場に来ていた。そこには射撃場を作る時に邪魔になった岩などがどこにも移動されずに放置してある。随分前からそうなっていたようだ。表面には乾いた土が今にも崩れ落ちそうになって付いている。
「なんですか?」
「雄輝、この岩を砕けるか?」
やっぱりそう来たか、と雄輝は思った。シャオメイが岩に近づいたときに既に気付いていた。そして、雄輝は突然突きつけられた難題に素直に答える。
「無理」
「だろうな」
「でも無理と最初っから思ったらダメなんでしょ?」
「そうだ。まずは出来ると思ってやってみろ」
雄輝は岩を殴るようなポーズをとって、
「こんな感じですか?」
「殴って砕こうとしているのか?」
「いやイメージですよ」
「そうか。イメージは大切だ。力を引き出すからな」
「ん〜…やっぱりこうかな」
今度は雄輝は岩に蹴りを入れるモーションを取る。
「どっちでもいいから砕いてみろ」
雄輝は深呼吸して目の前の岩に集中した。頭の中では手で行くか足でいくかを考えて、どちらにしても寸止めする事を想定した。その上でどっちが当たったら痛いかを想定すると、靴を履いている足のほうがいいと結論付けた。蹴る体勢になる。
雄輝の蹴りは特に何かを意識したものではない。俗にいう喧嘩キックという奴で、回し蹴りでもなければ踵落としでもない。サッカーボールでも蹴るようにちょっと斜めからうえに向かって、岩に当たるか当たらないかのところで止めるイメージで蹴る。そして意識をつま先に集中し、岩を粉砕するイメージを頭に浮かべた。
パンッと音がした。
「え?」
岩にヒビが入っている。驚いたのは本人だ。
「すっげぇ!武道家になれるかも知れない…」
だが雄輝の驚きを他所に、シャオメイは冷静に、
「ふむ」
と言ってヒビの入った箇所を見ていた。