12 ショックウェーブ 2

「どうですか?何かわかります?」
真剣な目でヒビを見ているシャオメイの背中に言う雄輝。
「お前は動きは早いが力がそれほど強いわけではないのだな」
「そう…ですね。男の時から腕相撲とかでも勝ったこと無いですからね」
「そっちの力じゃなくて」
シャオメイはそう言うと、先ほど雄輝がやっていた「サッカーの蹴り」とは違って本格的な少林寺拳法よろしく、フォームが整った蹴りを宙に放った。それは周囲の空気を一瞬真空にするかのような勢いを持っていた。感心している雄輝を見て、説明を始める。
テレキネシスがどういう原理なのか、私はまだ全ては分らないが今まで経験した事をもとに、お前に最適な力の出し方を伝授しよう。お前は力が私ほど強いわけではないみたいだからな。だがそれを悔やむ事はない。力の弱い、強いというのはただの特徴であって、それが直接の強さに結びつくわけではない。動物でも力が強い者が常に生き残るわけではないように」
そしてシャオメイは周囲に散らばっている小さな石や、両手で抱える事はかろうじて出来そうな大きさの岩をテレキネシスを用いて宙に浮かせた。それだけ重いもの複数同時に持てるところが既に力が強い事を意味している。
「身体に流れている神経組織、これには脳も含むが、これに近いほうが力は強く、より正確に働く。遠くなればなるほど、弱く、雑になる」
それを証明するように、シャオメイはそれら浮かべた石や岩を自分の周りに回転させてみせた。まるで太陽を中心に動く惑星のように。ただ、それはシャオメイに近い位置ではちゃんと軌道を保っているが、離れれば離れるほど軌道は楕円になったり小刻みに震えたり、石と岩がぶつかり合ったりした。
「つまり、お前の力が最大になり正確になるのは神経に最も近い部分だ」
「神経に最も近い部分?頭突きをすればいいのかな?」
「それは私もやってみたが、頭か指先か、どちらも一緒だった。若干力の差はあるのだろうがな」
「っていうことはさっきみたいに、足か手で触れるか触れないかのところでテレキネシスを発動させれば一番強くなるって事かな」
「それだけだと『一番強くなる』だけだな。この岩を見てみろ」
雄輝が先ほど蹴りを入れた岩だ。蹴りが命中した位置にはクレーターが出来ている。いかにも衝撃波が当たったような痕が残っている。
「窪んでますね」
「よく見てみろ。力が分散している」
「ああ…」
「まだ制御が出来ていないという事だ」