10 至高の業 3

「物事は単純に考えないといけない」
シャオメイはそう言うと、そこらに転がっている石ころを『力』を使って宙に浮かせる。それを彼女の右から左へと水平に動かす。
「銃弾は右から左へと移動している。まずは右から左へと移動している弾を検知して、そこへどれぐらいの『力』加えればいいのかを計算する」
「凄い動体視力ですよね」
「目で追うのは不可能だ。だからここでも『力』を使う」
シャオメイの周囲の石が次から次へと浮かび上がり彼女の周りをクルクルと回り始める。
「『クレヤボヤンス』…周囲にある物体を検知する力だ」
ふと雄輝は改めて考えてみる。そしてシャオメイが視界外にある石にもテレキネシスを働かせている事に気付いた。
「透視だとか千里眼とも呼ばれる」
「裏返しになったカードの図柄を当てたりするアレですか?」
「そうだ。人間は目で受けた光を頭の中の記憶と照合しながら補間して初めて『見る』事ができる。『クレヤボヤンス』は周囲にある物体の情報を目などのインターフェイスを使わず直接頭の中に送り込む。裏返しになったカードであっても、光の当たらない影の部分であっても、密封された箱の中であっても、そこに存在している限り検知できる」
「…ん〜。ひとつ腑に落ちない点があるんですけど」
「なんだ?」
「弾は滅茶苦茶速く動いてるわけじゃないですか」
「そうだな」
「目を使わなくて物体の位置が分ったとしても、脳がそれを処理するスピードのほうが遅くないですか?」
「なかなか鋭い質問をするな」
「え、そうですか?」
「私がお前に才能があると言ったのは、お前のその能力がずば抜けて高いからだ」