10 至高の業 2

「雄輝。お前の最初の目標は、対戦車ライフルから発射されたアダマンチウム弾をテレキネシスのみで止める事だ」
「いやいや、無理ですよ!」
シャオメイは冗談で言っている様子ではない。真面目に言っている分、まるで別世界の、例えばジャングルに住んでいるものがなぜ蛙を生で食べる事が出来ないのかと都会育ちの人に言う様な雰囲気を感じさせている。その場合はお互いどちらも歩み寄るような事はしないだろう。価値観が違うものに何を言ってもしようが無いのだ。
「雄輝。お前はその力をベッドに寝ているときに漫画本を起き上がらずに取る為に使うのか?」
「…見てきたような事を言いますね。そりゃまぁ、せっかくの能力を孫の手とかマジックハンドみたいな事だけに使うのはどうかとは思うけど…」
「『不可能』だと思っているのか?お前は自分の力が何なのか判りもしないうちに出来ないと決め付けるのか?」
「それはないですけど…弾を止めれなかったら死ぬんですよ?」
「…誰も最初から銃の正面に立てとは言っていない。分りやすいように私は正面に立っただけだ。お前の場合は弾道の傍で弾を止めればいい」
「そんな野球みたいな事言われても…」
「心配するな。私は独学で学んだがお前には私がいる」
そんな自信たっぷりのシャオメイの声を聞いていると雄輝も自分の力に根拠の無い自信が沸いてきた。出来るか出来ないかは分らない世界。今までの価値観の通用しない世界だ。一つ明らかになっているのはその世界についての知識を多く持っているシャオメイが雄輝に「才能がある」と言った事だった。