10 至高の業 1

雄輝が案内された場所は建物に囲まれた中庭のような場所だった。
周囲はコンクリートの壁で覆われてゴルフの打ちっぱなし練習場にも見えるが『的』を見てそこが射撃場のである事を知る雄輝。射撃のテストを行うのは人間だけではないようで、数体のドロイドが電源をオフにされた状態で待機していた。片腕にはガドリング砲や対戦車ライフルなど、映画のなかでしか見る事が出来ない重装備をされているものもある。
「35ミリ対戦車ライフル。弾はアダマンチウム貫通弾。厚さが50ミリのセラミック装甲までなら貫通できる。電磁パルスを用いて弾丸を高速に発射する。ミサイルにデコイやハッキングを仕掛けるタイプの最近の戦車にはこういった初速度が速い貫通弾が使われるようになった」
「へぇ〜…本物を見たのは初めてですね」
雄輝はなぜか射撃場の銃を撃つ場所ではなく、的がある場所に向かっているシャオメイに疑問を覚えながらもついていく。
シャオメイは歩きながら話を続ける。
「さて、質問だ。35ミリ対戦車ライフルを装備したテロリスト建物に立て篭もって、居合わせたお前に向かって撃ってきたとする。秒速1500メートル、着弾時の衝撃3トンのアダマンチウム貫通弾をどう処理する?」
「どうって…床に伏せてその場をやり過ごす?」
「既に発射された、と仮定しているだろう」
「ジ・エンドって奴じゃないですか?」
「普通の人間ならそうだろう」
シャオメイは的の前に立った。
何かの機械音が遥か向こうから聞こえる。雄輝が目を凝らしてみた先に、先ほど前でテーブルの上に置かれていた対戦車ライフルを装備したクモ型のドロイドがその銃口をシャオメイに向けている。
「えっと…離れたほうがいいのかな」
そそくさとシャオメイから離れる雄輝。
パンっ。と乾いた音がした後、シャオメイの右斜め後ろのコンクリートの壁に直径30センチぐらいのクレーターが出来る。
「これが難易度1。正面に『力』を加えて弾道を逸らす」
再びパンっと音がする。今度はシャオメイの正面にクルクルと回転する貫通弾が現れる。宙を浮いてるのでテレキネシスで弾を止めている事が分る。
「難易度2。弾に『力』をゆっくりと加えて正面で止める」
再びパンっと音がする。今度はシャオメイの正面に砂埃が舞う。衝撃波がシャオメイから発せられたかのようだ。
「難易度3。弾を内部から破壊し、破片を前面に飛ばす」
再びパンっと音がする。だが着弾点は何故かドロイドのすぐ傍だ。
「難易度4。弾を弾き飛ばして相手に跳ね返す。ただ、ドロイドを壊すと色々と文句を言われるのでな、適当な位置に飛ばした」
『力』について何も知らない人間が見れば何が起きたのか分らないだろう。だが雄輝は少しだけでもその『力』の存在に触れている。その延長線上には銃弾をテレキネシスのみで止める事も出来る可能性を感じ取っていたのだ。だから雄輝はシャオメイが言ってる事も目の前で何が起きているかも、分った。そして驚いていた。