9 就職 7

軍病院に到着後は正面玄関からではなく裏口から建物に入る。
今まで見た事の無い職員用通路を暫く進むとようやく待合室のような場所に通された。
5分かそこら待たされた後、シャオメイが現れる。
「どうした?デートにでも行った帰りの格好だな」
「いえ、これ余所行きの服なんです」
「ほう。なかなか可愛らしいな」
そう言いながらシャオメイは契約書の類と思われる書類をパラパラとテーブルの上に並べ始めた。それも全てテレキネシスを使ってだ。どうやら資料は入軍手続きのようだ。
「あの、やっぱり、学校とかは辞めないとダメですか?」
「ん?まだ卒業していないのだろう?」
「ええ…」
「高校は卒業しておいたほうがいいんじゃないのか?」
「え?高校辞めないといけないんじゃないの?」
「とりあえずこのまま入軍手続きはして、高校はそのまま卒業する。その後は警察などに籍を用意させよう。表向きは普通にしないとならない」
「ああ、なるほど。いきなり高校中退とかしたら目立つからですね」
「そうだ」
雄輝は資料に目を通しながら、一つ一つにサインをしていく。
「それで、入軍して何をするんですか?」
「今のままではまだまだ力不足だな。少なくとも私と同レベルにならないといけない」
「同レベル…?えっと、例えば武器の扱い方とか」
「いや、超能力の扱い方の事だ」
「う〜ん。離れた場所のものを動かすぐらいなら出来ますよ」
「まだまだだな。銃で武装したテロリストと対峙するには弾丸の雨の中を無傷で突き進めるぐらいの力が必要だ」
「…シャオメイさん、映画の見すぎですよ」
「私は本気だぞ?」
「またまた…弾丸の雨の中は建物の影に隠れてじっとしておくんですよ」
「信じていないようだな。では見せてあげようか。お前がこれから修行をする内容でもあるからな」
雄輝はシャオメイが言っている事は20パーセントぐらいしか信用していなかった。仮に本当だとすると文字通り弾丸の雨の中を走る仕事になるかも知れないからだ。だがシャオメイは冗談を真顔で話すような趣味は持ち合わせていないようだ。だから雄輝はシャオメイが言っている事が嘘であってほしいと思っているだけだった。