10 至高の業 4

「ずば抜けて高い…?何がですか?」
雄輝はシャオメイが言っている事が何なのか分らず質問した。
「既存の資料にこの能力を説明する言葉がない。だからどういえばいいのか分らない。ただ、この能力の特徴から私が勝手に名前を付けさせてもらうと『ヘッドレス』という能力になる」
「『ヘッドレス』…?頭の無い…バカって意味ですか?」
シャオメイは呆れた表情をした後、ため息をついて、
「違う…」
と言った。そして続ける。
「ヘッドレス…。脳を使わないで脳と同じ処理を行う事を言う。それも高速に。携帯電話のクライアント端末を『脳』とすれば、これはサーバの機能を直接使う事に似ている」
「ああ、そういえば…」
「ん?」
「空を飛んでるハエを爪楊枝でしとめた事があったけどそれの事かな?」
「ハエを爪楊枝でしとめるのが趣味なのか?」
「違いますよ!能力の限界を試していたのです」
シャオメイは雄輝に再び背を向ける。周囲を回転していた石はぽとぽとと地面に落ちた。
「ヘッドレスの能力は超能力の基本となっている。だが私にはそれが何一つわからないのだよ。手を触れずに物体を動かしたり、周囲の物体の位置を詳しく把握したり、脳の処理能力を超える計算能力を得たり、これはどれも宇宙の物理法則から逸脱している。だが、明らかにこの力の探求は真理を突き止める事に繋がっている」
「真理…?」
風が吹いていた。
それは中庭にも吹き込んできて雑草や鉢植えの木々を揺らす。まだ昼間だというのに建物の位置がそうさせるのか、陽があまり当たらないその場所は夕方にも思えてくる。その涼しい風がシャオメイの黒髪を靡かせる。どこか寂しげな背中だ。
「宇宙には時間や物体が存在し定められた法則に従っている。その中で生物だけが目的を持って『生きている』なぜだ?私達はどこからやってきて、どこへ向かうのか?その真理がこの『力』の中にあるような気がする」
雄輝は再び中庭を見てみる。
風や土、雲に空、そして水。そしてその中にある植物や動物…。
生物だけが異質に見えた。