9 就職 3

昼頃、母親は朝に言ったとおりに買い物を終えて戻ってきた。食材とそれから雄輝の女モノの服を持って。
「普段着と、それから…制服も」
制服というキーワードで雄輝の脳裏にシャオメイの顔が浮かぶ。
(そういえば、俺、学校を中退しなきゃいけないんだよな。ん〜親になんて説明すればいいんだろう…シャオメイに相談するかな)
袋から雄輝の通う学校の女子制服を出して見る。改めて見るとまるで女性の制服をどこからか購入して着る少し変態の入った男性の気持ちになってしまう。これを着てしまっていいのだろうかと、まず雄輝は考えるのだ。はたから見れば女子が女子制服をまじまじと見ているだけの光景なのだが。
「それから、下着ね」
雄輝の目の前に出される女性用の下着。ブラとパンツ。これを見た時の抵抗は制服の時よりも大きかった。着るとなれば尚更だろう。
「これ着なきゃいけないのかぁ」
「当たり前でしょ。ノーブラでトランクスでも履くつもりだったの?」
「んん〜…」
実際に昨日、雄輝はノーブラ・トランクスで外出していた。
「手伝ってあげようか?」
「いいよ。手伝わなくてもいい」
「あら、そう。で、これが、普段着ね。とりあえず2着買っておいたから。母さんのセンスだけど」
「え、ちょっ…」
見せられたのはノースリーブのワンピースだ。もう一つ袋からはみ出しているのはスカートだ。どちらにしてもスカートは大前提のようだった。
「どう?可愛いでしょ?」
「俺さぁ、男なんだけど…」
「男じゃないじゃない」
「いや、男だよ。身体は女だけど」
「そうよ。身体が女でしょ。だから女モノの洋服買ってるのに」
「いや…これはきっっついなぁ」
「あら、サイズ合わない?」
「そういう意味じゃなくて…」