12 ショックウェーブ 5

シャオメイの蹴り実演を見た後の雄輝の練習場は『軍病院の射撃場』ではなく、病院外の岩場となった。
岩場は軍病院が立てられる時に整地された場所の一部であった。杉の木々を潜り抜けた先に急斜面があり苔が生い茂り周囲には湿気が充満している。岩の中から水が湧き出ている。その場所にある岩をテレキネシスを用いて割るのが当面の目標だった。
まず最初に雄輝は岩がそもそも割れやすいものではない事を確認する為に傍にあった石を何個か宙に浮かべて岩にぶつけた。相当硬いようで、表面の苔が僅かに取れただけだった。
「よし、では早速」
雄輝は蹴りの構えをする。相変わらずサッカーの蹴りと同じ構えだ。そして一点に力が集中するようにイメージして、岩に向かって蹴りを入れる。
蹴りは当たった。寸止めにしたつもりが少しだけ岩につま先が当たった。コツッという音の後、痛みでつま先を抱えて横たわる雄輝。
「はぁ…クソ痛い」
四つんばいになりながら、岩に近づいて先ほど蹴りが命中した部分を見てみる。確かにテレキネシスが発動した感はあったが、岩が粉砕された気配はない。というより、何一つ変化が無かった。
「あら?」
一瞬、自分に力がなくなったのではないかと思い、雄輝は周囲に散らばっている石ころを宙に浮かべてみる。ちゃんと浮かぶ。
首を傾げながらもう蹴りの構え。一点に力を集中させる事をイメージして蹴りを入れる。
再び蹴りが入った箇所を見る。何も変化がない。
「っかしいなぁ…」
今度は一点に力が集中しないように蹴りを入れる。
小さいながらもクレーターが出来る。
「出来るじゃん。一点に力を集中すると出来ないのかな?」
雄輝はクレーター痕を見ながら言った。
「ん?」
よく見てみると、クレーター痕の中に針の穴ほどの小さな穴がいくつか開いている。最初は虫食い穴かとも思ったがこんな硬い岩石に穴を開けるほど凄まじい力を持った虫は想像できない。
(これって…一点集中で開いてる穴じゃないのか?)
雄輝は蹴りの構えをして、再び一点に力を集中させるイメージでクレーター痕に蹴りを入れる。再び蹴りを入れる。また、蹴りを入れる。それを何度も何度も繰り返した後、もう一度見てみると、そこには無数の針の穴が開いている。
「一点集中しすぎなのかよ!」
それから夕方暗くなるまで、雄輝は自身の力の微調整を繰り返し行った。その結果、35ミリ貫通弾と同じ35ミリの穴を開けることが出来るようになった。つまり、自身の力の範囲をミリ単位で調整できるようになったのだ。