17 コンセッション・ハンター 2

「電脳工学に詳しい人間…っていうと?」
青井が千葉に尋ねる。
「最初、今回の騒動を引き起こした輩が何かしらのハッキングの技術に卓越しているものだと考えていたんだが、それだけでは説明できない部分がある。記憶が消されたり書き換えられている事だ」
「確かに、そうですね」
「青井くん。これはかなり対象が絞られてくるぞ。日本で電脳工学分野の知識に広い人間はそれほど多くはない」
そう話す千葉の顔はそれほど明るくはない。
「どうかしたんですか?」
「私の生徒に犯人がいるのかも知れない」
「心当たりが?」
「いや。まだない」
その話に東屋が割り込む。
「うちのジジイがいま調査してるよ、その話繋げとこうか?」
「お前、自分の祖父をジジイだなんて呼ぶもんじゃねーよ」
「ああ、ごめん」
そしてしばらく東屋は天井の隅の辺りを見つめている。大抵は電脳通信で気を逸らさない為にそういう事をする癖がある人がいる。東屋もその一人なのだろう。終わったのだろうか、再び青井のほうを向きなおして、
「生徒のリストがほしいってさ」
と言った。
「わかった、今から渡そう。電脳通信でいいかい?」
「あ、うん。ファイル送って」
千葉教授は大学の彼のデータバンクから生徒の一覧を送った。電脳通信経由のファイル転送で千葉、東屋(孫)、東屋へとデータが送られた。