17 コンセッション・ハンター 1

サーバルーム内には青井と東屋と千葉の3人が待機していた。
風雅こと如月との通信が途絶えてから既に1時間が経過している。その1日の間、3人はサーバルームから離れることは無かった。
生命維持装置に繋がれた如月と豊川は相変わらず何事も無かったかのように眠っている。だがなんらかの理由で突然死亡…すなわち脳死になる可能性もある。そこに突然声が発せられる。如月だ。
『あ、通信回復しました』
『…おぉ?マジか』
噛り付くようにモニターの前に近寄る3人。
『どうやら忘却の神殿というのは本当に忘却の状態になってしまうところだったようです。・・・ゲームにそもそもそういうイベントはありましたっけ?』
『いや。記憶の中身を書き換えるのは電脳倫理法違反になる』
『という事は…』
『誰かが意図的に仕組んだって事だな』
『LOSのシステムにハッキングを仕掛けた人間と同一犯なのでしょうか…。これだけの事が出来るというのは、よほどシステムに精通していないと不可能だと思われるのですが…』
『まだ予測の域は出ないな。当分。それと何か変化はあったか…例えば』
『タロットですか?』
『ああ』
『恋人のカードに絵が浮かび上がりました』
『やはりそうか』
如月と青井のやり取りを千葉と東屋が隣で聞いている。
「ってか、犯人がこのタロットの絵を全て埋める事を望んでるってことは、ますます何がしたいのかわかんなくなってくるね」
東屋がお手上げのポーズをとる。
それに千葉が答える。
「何がしたいのかはよく解らんが、どういう人間なのかはわかってきた」
「タロット占い師?」
「いや、電脳工学に詳しい人間だ」