165 気にならない転校生 7

放送設備がスピーカーから流す音は全校へと流れている。
しかし、どうも音だけでは無いらしく、教室からは悲鳴や非難の声のようなものも聞こえてくるのだ。
たまたま音楽室でもその音が聞こえてきたから俺達はそこへと入った。そして、目の当たりにしたのだ。
第二の『惨状』を。
スクリーンに表示されているのは放送室だ。
普段ならそこには放送委員が学校内全校生徒向けに連絡する目的で使ったりする。が、今、映像に映っているのは一人の男…ケイスケが椅子に全裸で座らされて、しかもロープで亀甲縛りに近い形で縛られている様子だった。
もうこれだけで放送禁止、放送免許取り消し…いや、公衆の門前でブ男でデブが全裸になる罪により逮捕されてしまうレベル。
「ナニヲヤッテルノデスカ、アノFatsoハ…」
顔を真っ赤にしたケイスケは猿轡をハメられてて「ンーンー」と言っているが、それは苦痛に満ちた表情というよりも、快楽を我慢しているようにも見える。その時、チラッとケイスケの太ももの上あたりで何かが動くのが見えた。
「あ、あれはキミカの腕じゃないニカ?」
「だからキミカの腕じゃないっt…おぉぅ?!」
カメラは被写体を全体が映るようにズームを解除していくのだ。
どうやら膝の腕で動いていたのは間違いなくあの悪魔の腕で、リモコンでカメラを操作しているようなのだ。
そして、同時に、何故ケイスケが顔を真っ赤にして悶えているのかが…わかりたくもないけど分かってしまった。
その瞬間にも様々な教室、職員室から悲鳴が聞こえる。
そう、ケイスケの股間には大人のオモチャが装着されてあるのだ。そしてあの悪魔の義手がそのオモチャをかなり丁寧にイヤラシイ手つきでケイスケの股間で動かしたり、太ももを優しくタッチしたりする。
しかも腕の切断面が見えないから事情を知らない人が見たら、本当に女子生徒が教師を縛ってイタズラしている様子をビデオに撮っているようにも見えるのだ。
マジでヤバイ。
『キミカちゃん、あぁぁぁぁ!気持ちいいですォォ…』
「って、なんであたしの名前出しとんじゃァァァァァァ!!」
俺はスクリーンに向かって吠えた。
っていうかどうやったらあんなに綺麗な亀甲縛りが出来るんだよ!絶対に抵抗してないだろコイツは!!
クソッ!!
とにかく放送室に急がねば!!
ものの1分かけずに放送室に雪崩込んだ俺達はもうケイスケがいようがいまいがお構いなしにマシンガンとライフルとハンドガンによる一斉射撃をかました。
この間の映像もちゃんとカメラをに流れてるよな?
そうしなきゃあの手は俺の手ってことになるじゃんかよ!!
俺はすぐさま、その卑猥な映像を、キモいデブが亀甲縛りでイジメられてる酷い映像を止めた。
「奴は?!」
「居ないニダ!」
「Oh…Look!!」
言うが早くコーネリアはサブマシンガンをぶっ放す。
俺もソンヒも同じ様にそちらへ向けて銃をぶっ放す。
居たのだ。
腕が。
腕は器用にカーテンを使って自らの身体を空中にジャンプさせる。もちろんそれを追って銃を撃ちまくるわけだが華麗に交わした腕は、そのまま壁に着地して、しかもその壁は黒板で、着地と同時に爪を立てた悪魔の腕は『キィィィィィイイィィィィ!!!』という殺気立つような最悪な音をまき散らしながら地面に着地。
凄まじい早さで廊下へと逃げ出した。
「し、身体能力がさっきよりも上がってるニダ!」
「素早イデス!!」
廊下に出ると既に居なくなっているぞ…マジかよ…。
「Hey!!先生ガキミカニ変ナ腕ヲ装着シタセイデ大変ニ変態ナ事態ニナッテマーッス!ドウ責任トルンデスカァ?!」と、言いながらコーネリアはケイスケの髪を引っ掴む。
「ウリがキミカの腕を掴んで切断したことになってしまってるニダ!またウリの評判が落ちたニダ!謝罪と賠償を請求するニダァ!」と、言いながらソンヒはケイスケを縛っているロープを更に縛り上げる。
「だいたい妹の部屋から色々なものをパクってるんじゃないよ!変態兄貴が!そんな事してるからこんな事になるんだよ!」と、言いながら俺はケイスケの巨大な腹に向かってパンチをキメる。
その3人の攻撃を…その3人の美少女の攻撃を、ケイスケは涎を垂らしながら嬉しそうに受けていた…。
「ダメダコイツナントカシナイト…」
「今までで一番うれしそうな表情してるニダ…」
「今の状況だと逆効果だね…」
その時だ。
再び俺の電脳に通信が入った。
ナツコからだ。
『キミカさん!キミカ・ファンクラブの面々が腕を追いかけまわしてなんとか体育倉庫の中に追い詰めましたわ!』
『よし!いま行くね!』
『い、急いでくださいまし!凶暴性が増していますわ!』
マジかよ…。