165 気にならない転校生 3

ケイスケは最初にソンヒが入学してきた時に気付いたっぽい。
ソンヒは言わずもがな過去にアンダルシア学園に喧嘩を売ってきた連中が雇っていた雇われ喧嘩屋的な位置づけになっており、ケイスケはそのソンヒがなぜ学園に入学できたのかを調べてみるなどと言っていた。
他の生徒は間近で彼女を見ていないのでどっかの美少女が学園に入学してきた程度でしか知らないのだろうか。しかし、カンの良い生徒ならひょっとしたら気付いているかもしれない。
少なくとも実際に戦ったり、幸か不幸か色々と行動をともにすることが何度かあったドロイドバスター面々は、朝の会終了後早速ソンヒの元へと集まってきて、中でもコーネリアがアメリカの青春ドラマにある高校生同士の喧嘩のように、ソンヒの肩を手で突き飛ばした。
「Hey!!ナンデオ前ガココニイルノデスカァ?!」
当たり前の反応である。
「な、なにするニダーッ!」
これも当たり前の反応だ。
次にコーネリアはマシンガンをどこからか生成するとソンヒの足元に向かって無茶苦茶にそれを撃ちまくりながら、
「オ前ガ悪サシタコトヲ誰モ覚エテナイト思ッタラ大間違イジャー!」
と叫んだ。
もちろん、タップダンスを踊るソンヒも当たり前の反応だ。
ダンスっていうか銃弾から免れようとしてるだけだけどね。
「転校生の歓迎にマシンガン撃ちまくる高校がどこにあるニカ!」
ひとしきり撃ち終わったのを確認してソンヒは袖から小さな二丁ハンドガンを引っ張り出すと既に個人用プラズマフィールド発生装置を展開済みなコーネリアに向かって銃を撃ちまくる。
涼しい顔でそれを防ぐコーネリア。
俺が言う。
「前の学校はどうしたんだよ?辞めたの?」
ソンヒは苦虫をケツからツッコまれたかのような顔をして、
「辞めさせられたニダ」
などと言うのだ。
「はぁ?」
「お前等イルボン共が国内の在日朝鮮人炙り出し政策とかやってウリの国籍バレて退学処分になったニダ!!」
「へぇ〜なにそれ、なんか面白そうだね」
「おい!」
「あぁ、そうか、中国と朝鮮がまた揉め事起こしたからか。ま、自業自得だね。っていうか本国に強制送還されないだけありがたいと思えばいいじゃん、プゲラッチョ」
「絶対に許さないニダ!!謝罪と賠償を請求するニダ!!」
マコトが不思議そうな顔をしてソンヒに聞く。
「なんで偏差値の低くて不良とかロクデナシが沢山いる向こうの高校を追い出されたのに、お嬢様とか小金持ち以上の財力がある人が通う清く正しい社会の模範な生徒がいるアンダルシア学園には入学できるの?」
「にゅ、入学しちゃ悪いニカ?!」
「「「悪いに決まってんじゃん」」」
俺とコーネリアとマコトは声を揃えて言った。
「おいいいいいいいいいいい!!!」
ソンヒが顔を真っ赤にして怒鳴る。
しかし一方でマコトは冷静にも腕を組んで言う。
「なるほど、これが裏口入学っていうんだね」
「知らないニダ!!」
うんうん頷いて何かしらわかったかのようにコーネリアは口を開く。
「オソラク、社会ノ模範トシテ、イイ模範ダケジャナク、悪イ模範ヲ用意シタカッタノデショウ。反面教師トイウ奴デスネー」
なるほど、確かにそれはありだな。
「…おい…お前達…それ以上ウリを馬鹿にすると、そろそろ堪忍袋に赤唐辛子が注ぎ込まれるニダ…」
なんだそれは、尾が切れるよりも苦しそうだな。
すると、ソンヒが今にもドロイドバスターに変身しそうなポーズになる。が、それを察知した俺、マコト、コーネリアが一斉に飛びかかって俺はソンヒの背後から羽交い絞めにして、ついでにおっぱいを揉み、マコトはソンヒの腕を逆関節にキメて、コーネリアは四の字固めをキメた。
「ぎゃぁぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
クラス中にソンヒの叫び声が響く。
「…アンタ達、何やってんのよ」
そこへ通りかかったのがクラス委員長、ユウカだ。
「何って、プロレスごっこだよ」
すかさず俺が答える。
「程々にしときなさいよ。っていうか、泡吹いてるじゃないのよ」
見ればソンヒは3方向からの攻撃により白目を剥いて泡を吹いていた。
「あ、それと、」
ユウカが言いかける。
何か嫌な予感がするぞ…。
「転校生に学校の案内をしてあげなさいよ?」
「は?」
「いや、は?じゃないわよ、学校の案内とか、部活は何に入るとかアンタが来た時もコーネリアやメイリンが来た時もそうしてたでしょ?」
「それはクラス委員長のユウカの仕事でしょ?」
「私は『普通の転校生』担当なのよ。前にコーネリアとメイリンに付き添ってあげたのは特別なんだから。『珍獣』専門はキミカでしょ」
「ンだとゥ?!」
「わかったら放課後にちゃんと案内してあげなさいよ?」
「なんであたしがやんなきゃいけないんだよ!!」
そんな言い争いをしているなかでもソンヒは強烈な回復力をもってして話に割り込んできた。もちろん俺の羽交い締めやコーネリアの四の字固めの一瞬のスキをついてすり抜けて、立ち上がり、
「珍獣て誰のことニカーッ!!」
などと吠える。
「えぇぃ、おとなしくしろ珍獣!」
俺はソンヒのスカートをズリおろそうとする。
必死にそれを抑えながら、
「ウリも学校の案内とかして欲しいニダ!運動部でウリの超人的な力を披露したり、水泳部でスクール水着の女子の中に混じってキャッキャウフフしたり、テニスで熱いバトルで語り合いたいニダ!」
「そんな妄想小説家の自作オナニー小説みたいなストーリー展開があるわけないじゃん、ほら早く座りなさい珍獣」
そんな俺とソンヒのやりとりなど無視してユウカ糞クラス委員長は、「それじゃ、お願いね、学校をちゃんと案内してあげるのよ」と俺達に言い残して自らは席へと戻って行きやがったクソが!!