140 戦車の洗車 4

俺とマコトは南国気分を味わっていた。
マコトのエントロピーコントロールで南国になった10数メートル四方のエリア内、多脚戦車型タイプのドロイド『タチコマ』の背中の上で。
そんな俺達の隣を、ガソリンを補充しに来た人達や、ドトォールの客がチラ見している。女性はイライラしながら通りすぎて、男性は横目で「俺は見ていません」アピールをしながらも、チラチラ見ながら。
そんな中、一人の黒髪の美少女がぼぉーっと俺達のほうを見ている。
よく見ればメイリンじゃないか。
メイリーン!何やってんだよ?そこは寒いでしょぉ?」
と俺はへらへらしながら手を振った。それから、「てぃ!」と水を高圧縮で手から放ち、メイリンの顔めがけて命中させる。
「ブッ」
メイリンが小さな呻きをあげる。
「な、何をする!冷たいじゃないか!」
キレるメイリン。そしてズカズカと歩み寄ってきて俺達の制御するフィールド内へと入るのだ。
「うわッ!熱い…」
「うへへへ…」
俺はタチコマの背中の上でゴロンと身体を転がして、うつ伏せになると、メイリンのほうをジト目で睨む。
メイリーン。水着になりなよー。ここは熱いよォ…」
メイリンは目を血走らせて俺を見ている。うつ伏せになって変形した柔らかそうな俺の胸元のほうを見ているのか…。
「み、水着、持ってきてない…」
鼻息を荒く、興奮した顔で言うメイリン
「ちょっと待っててね、あたしの水着がぁ…あったかなぁ?」
キミカ部屋の衣服が入ってるクローゼットの中から水着を引っ張りだすと、メイリンに手渡す。ちょっとサイズは彼女の身体には小さいかも知れないな。俺と身体のサイズが会うのはコーネリアぐらいだしな。
「わ、わかった。水着になる!今すぐに!」
スッ…ポンッ!ポンッ!と服や下着を脱ぎ捨てるメイリン。あっという間に節操無く素っ裸になると、俺が渡した水着を装着。しかしメイリンの身体には少し小さい水着…だけれど、その小さいビキニはメイリンの巨乳をさらに巨乳としてしまう魔法の水着となったのだ。
俺もマコトも身体は女の子だが中身が男の子なのでそんな巨乳のメイリンに目が釘付けになるのは仕方のないもの。マコトなんてメイリンのおっぱいを見ながら俺の背後から抱きしめて俺のおっぱいを揉んでるという凶行に及んだほど。
「あ、そうだ…名案を思いついたぞー!」
俺ははっとして、そう叫んだ。
「ん?名案?」
メイリン!お金あげるから、この戦車洗ってよ!」
「いくらくれるんだ?」
「2000円ぐらいでいい?」
「2000円…!!!いいのか?!家が買えるぞ!」
お前の国では2000円で家が買えるのかよ…。
「いいよいいよ。お願いしますね」
「わかった!」
ブラシを手渡して、メイリンにゴシゴシと戦車を洗ってもらう、そんな中、俺とマコトは戦車の上で寝転がって優雅にドリンク飲みながらバカンス気分だ。
「よし!足の部分は洗ったぞ!」
「おーけー!んじゃ、上のほうを」
グラビティコントロールメイリンの身体を宙に浮かせて、俺達のいるタチコマの『背中』の部分へと持ってくる。
「んじゃ、ブラシでゴシゴシお願いね」
「わかった!」
それから小一時間経過。
そろそろメイリンの戦車の洗車が終わりそうだという頃だ。
なんか嫌ぁーな声を聞いた。
「うわッ!なんだかここだけ熱いニダ!」
ニダ?
「水着の女の子が戦車の上にいるニカ?」
ニカ?
俺はキミカ部屋からプラズマライフルを取り出し(0.0012秒)すぐさまそのニダだのニカだのを語尾に並べてる『ソンヒ』に狙いを定め(0.0024秒)発射(0.0001秒)
ソンヒの頬の少し隣をかすめ、銃弾は地面に穴を残した。
「な、何をするニダァァァッ!」
「なんだ、ソンヒか」
「撃ってから気づくな!」
「シッシッ!」
俺はソンヒを犬を扱うように『どっかいけ!』のジェスチャー
「イルボンがまたアホな事してるニダァ…ぷぷぷー」
いつものあのクッソむかつく笑い声を出すソンヒ。
俺はうつ伏せになってスナイパーヨロシク、プラズマライフルの照準をソンヒのオデコに狙いを定め言う。
「おい、その頭にプラズマライフル弾によって穴を開けられて、そして頭の血行が良くなって片方の目で得体のしれないホムンクルスを見えるようになってしまいたくなかったら、そのキムチ臭い口から変な笑い声を出すのをヤメロよ、チョンゥ…」
「何を言ってるニダ?!漫画の読み過ぎニダ!それより、どうしてここだけ温かいニダァ?」
「そりゃ、マコト様のエントロピーコントロールのおかげだよ」
「凄いニダ!そんな力が使えるニカ?!」
「そりゃ凄いのさ、マコト様はお前なんかに比べt…」
ん?そういえばコイツはコイツでコーネリアと同じで物質創造の力が使えるんじゃないっけ?
今、俺の中のフォースの暗黒面が囁いた…。
『このまま無骨な戦車の上で暗い寒空の下、違和感のある温かさに包まれて正月を送るというのか?もっと面白い事をしたくないか?』という暗黒面の囁きを…。
「ソンヒ、ソンヒ」
俺は手招きをする。
「な、何か嫌な予感がするニダ…」
「別に嫌な事をしようってんじゃないよ、ほら、今こうやって温かいけど、ここってなんか無骨じゃん?ちょっとあなたの能力で面白い事しないかって話だよ!ほら、こっちにきてよ(ゲス顔」
「キミカがゲス顔になる時はろくな事がないニダ…」
と言いながらもソンヒはこっちにやってくる。
「ウリの能力で何をするニカ?」
「この辺りを砂浜に変えてくれない?」
「なるほどぉ、確かに違和感があったニダ」
言うが早く、ソンヒは地面に手をついて、
「おりゃー!」
と叫んだ。
ズズズズズズ…ズズズズ…。
俺達がいる戦車がどんどん地面に沈んで…いく…。
す、砂浜だぁ!!!
ドトォール併設のガソリンスタンドが砂浜になっていくゥゥ…。
ドトォールが砂浜の横にある海の家みたいになってるゥ…。