4 恋愛相談 3

ある日、みのりが務めているゲームセンターの前で人影が行ったり来たりしているのが見える。入りたそうにも思えるし、逃げたそうにも思える。よく見ればその姿は井川だった。
何度かそういう光景を見ることになった。
みのりはそれを躊躇いの様にも受け取っていた。
現実と非現実の境目にいるのだと受け取っていた。
いつしかそんな井川の姿も見なくなり、そして再び彼の姿を見る時、傍らにはみどりの姿があった。ゲームセンターの前を二人は笑顔で通り過ぎていった。
胸が締め付けられた。
今まで経験したことの無い感覚だった。
仕事中ずっとそんな感じに頭をぐるぐるとその光景が思い浮かび、みのりは仕事が手につかない状態を過ごした。
ふとあの時、みどりに言ったことを思い出した。
「自分の気持ちを素直に言えばいいと思うよ」
「え?」
「きっとまだ井川君は自分の本当の気持ちを言えないんだよ。だから、みどりちゃんが素直に自分の気持ちを言っているのをみたら、この人になら自分の気持ちを素直に打ち明けたいって思うんじゃないのかな…そしたら」
(素直に自分の気持ちを言え…かぁ。本当に恋愛の相談事って、他人事なんだね。誰かと付き合ったことがないどころか、誰かを好きになった事すらないのに)
みのりは自分自身を軽蔑した。