17 コンセッション・ハンター 5

陸風会…電脳関係のトラブル起因でのユーザと企業との仲介・裁判を行う市民団体」と、小山内はPADタイプのネットワーク端末を片手に持ちながらその画面に表示されている情報を言葉にしている。
「へぇ。最近はそういうのがあるのか?」
「PADですか?『最近は』って…これはずっと昔からありますよ。東屋さんが生まれるずっと前から」
「そうなのか。あんまりコンピュータの事はわからんでな、で、続きは」
「えっと。『表向き』はそういう事になっていますね電脳関係のトラブルと言っても相手にする企業がそれなりに大きなところでなければ動かないみたいです。日本・海外問わずに裁判を起こしていますね」
「っていうことはひょっとすると、例えば原告がきちんとしたユーザじゃないって事もあるのか?」
「みたいですね。EAI社との裁判を起こしたか、起こす予定だった人達は元々陸風会のメンバーですね」
「なんとも…あからさまにタカリ屋というわけか」
「LOSにログインしている人は世界中にウン百万といるのに、偶然にも陸風会のメンバーにだけ何かしらのシステムトラブルが起こっていて、裁判を訴えているんですから。これが本当なら宝くじを当てるよりも低い確率ですよ」
と、ちょっと怒り気味に話す小山内。
「なんだ、怒っているのか?」
「怒ってはいませんよ。ただ、働きもしないで人に集る事しか考えていないこういう連中が好きではないってだけです」
「別に好きになれと言うわけではないが、警察としてこれから仕事をする上でそういう連中が頻繁に顔を出すようになるからな」
そうこう話すうちに二人は陸風会の事務所へと近づいていた。ビル街の一角。雑居ビルのフロア一つを貸しきってある。