3 否現実の人 6

料理を作り終わって、それを二人で食べ終わって、夜風が静かに吹き込んでくるその部屋でみのりとみどりの二人はテレビを見ていた。
またみどりはみのりの顔を見てから言う。
「でも、眼鏡しててもモテそう。守ってあげたいって感じだもん」
「あはは。そうなんだ」
「あ、そうだ。三つ編みしてあげるよ。もっと可愛くなるよ」
「え、いいの?私三つ編みしたことないから、覚えておきたいな、やり方」
みのりが三つ編みに興味を示すのは最愛する魔法少女ミミが、ある放送で友達に三つ編みにしてもらうという内容のストーリーがあったからだ。自分自身に抱く魅力にまた別の彩りを添えることを期待していた。
みのりの髪を三つ編みにしながら、みどりは話始めた。
「こんなこと、両親には言えないから、みのり姉さんに言うね」
「ん?」
「私、好きな人が出来たんだ」
「へぇ〜」
みのりは少しだけがっかりしてしまった。
どんな女性でも恋をする、そんな現実があったからだ。それはまだ子供だと思っていた隣の家の少女でも同様にだ。まるで自分の好きな人を誰かに取られてしまう様な嫉妬に似た感情があった。
だが一方でみのり自身は今まで本当の女性を好きになったこともない。
産まれて初めて女性…つまり、みどりと、長い時間、多くの話した。その女性も、恋をしていつかどこかで幸せを築く。そんな中で自分だけが取り残されているように感じていた。
「どんな人なの?」
気になって質問するみのり。
「えとね…もの静かで、ミステリアスな人なの。授業中とか休み時間も外をボーっとみてたり…。彼ね、井川春樹君っていうんだけど、自分の名前呼ばれても気付かないんだよ。ちょっと変に面白いところがあって、好きなんだ」
(井川春樹…どこかで)