1 脱皮 1

物語は最初へと戻る。
全ての始まり、川上村のウイルス騒動へ。
男性だけが病院に移送され、女性だけになった川上村。のはずだったが一部の男性は異常事態に気付かず、ただ不安の夜を過ごしていた。
白雲湖に流れる川、その上流に向かうと家はお世辞にも新しいとは言えないものになる。都市開発が進んでも地形が悪いのか立地の条件が悪いのか、その場所は以前の川上村がそのままに残っていた。
ただ、人は殆ど住んでいない。みんな新しく出来たアパートやマンションへの引越しを終えていたのだ。
薄暗い小さな路地を奥へと進むと木造のアパートが現れる。
日本の殆どの建築物はカーボンファイバーで作られているので、この時代では木造は非常に珍しい。だが決してアンティーク的ないい意味での珍しさではない。悪い方での珍しさである。
それは廃墟を紹介する雑誌「日本廃墟紀行」にのるほどである。
だが、廃墟マニア達の思惑とは裏腹に木造のアパートは廃墟ではない。残念ながらそこにはボケが侵攻したじいさんと、大学生が一人住んでいた。ただ、人が住んでいるのにも関わらず廃墟として認定されてしまうほど、そこには独特の雰囲気があった。