17 討伐令 1

シハーの聖都バベルから東にわずかに進んだところに、砂漠の色とマッチした迷彩柄の布を用いたテントが並んでいる。時折、そこを人間が出這入りするが、全てがオークが魔法で化けているものだった。そこは、アルタザールから風雅達を追い回していた「八つ裂き旅団」のテントだった。
テント前には人間の姿ではなく、オークの姿として整列していた。時折聖都バベルに調査に出掛けていた副官であるズークは、部下と共にその光景を目にして驚いたのだ。聖都から近いので人間の姿に化けなければ警備隊に見つかってしまう恐れがあるのだ。
「どういう事ですか」
ズークは首領であるナブに駆け寄った。
ナブは動揺ひとつせず、言う。
「上から伝令が下った。これよりキムナイの村に移動する」
「伝令?」
「うむ。散々わしらの邪魔をしておった風雅とかいう奴と取り巻き連中に対して討伐令が下ったのだ。これでこころおきなくあの者どもを始末できるわ」
「しかしなぜ突然…」
「しらん」
ズークは焦っていた。風雅とは情報を共有するまでの関係でもあったしまだ聞いていないことは多くあるからだ。相手の実力が自分たちよりも上である事も焦る理由になっている。
「首領、キムナイの村は聖都に近い。仲間を呼ばれたらこちらは勝ち目はありませんよ。ここは体勢を整えて…」
「体勢を整えるにも本国から兵をよこすにどれぐらい時間がかかるかわかっているのか?それにな、これまでは宝の確保が目的であったからわしらは本来の実力を出せていなかったのだ。本気でぶつかれば結果は今までとは違うものになる!」