4 恋愛相談 1

みのりが家まで帰る途中の道すがらに前方をあるくみどりの姿を見つけた。どことなくいつものみどりの印象と違って俯いている。ひょっとしたら人違いではないかと注意しながら、顔を見てみる。みどり本人だ。
「こんにちは、どうしたの?元気なさそう」
「あ、みのり姉さん…えっとね、ちょっと次のステップをどうしようとか考えてて」
「次のステップ?」
「あ、私さ、井川くんと付き合ってるんだ」
さっきの俯きは嘘のように微笑むみどり。
「そうなんだ、告白したの?」
「うん。そしたらちょっと考えさせてって言った翌日にOKもらったの!」
「よかったじゃん!」
そうは言いつつもみのりは少し悲しいような寂しいような気持ちになっていた。本当は祝うべきなのに大切なものを取られたような気持ちになった。
みのりの中はまだずっと男だったのだ。生まれて初めて母親以外の異性でよく話をしてくれた女性…みどりが彼氏を作っていくというのは幼馴染のまだ恋心をいだいてもいない女性が彼氏を作っているのに似ている。だが、みのりは心は男のままであっても既に身体は女性。みどりとは結ばれることはまずありえない。同性愛でも無い限りは。
「…よかったじゃん、うん」
何かに納得したように、小声で言う。
「あ、それでさ…みのり姉さんに相談しようと思ってたんだけどさ」
「うん?」
「えっとね…」
「ステップアップがどうとか…」
「うん。井川くんと付き合って結構立ってるんだけどさ、まだ…キスとかもまだだしさ…その、こういう時ってひたすら待っていた方がいいのかな?」
みのりは井川がゲームセンターで恋愛美少女ゲームをプレイしていたのを知っている。みのりが男性だった時と同じなのだ。性格は若干の違いがあるとしても、女性に対する認識も同じだろう。つまり、異性に対して奥手だから恋愛ゲームへと逃げているのだ。
「えっと…ちょっと待ってね。考えるから」
と苦笑いをしながら答えた。
(考えるって言っても…あぁ、そうだ。自分が彼女が出来てどうしたいかって考えたらいいかな)