18 討伐令 6

再びナブのラッシュが始まった。
右フック、左ストレート、右ストレート。最初こそナツメグはそれらを一つ一つ防いだり交わしたりしていた。だが、次から次へと繰り出されるそれらの攻撃を防ぐだけのパワーがナツメグには無かった。
「波動をコントロールする貴様の技は、一つ一つの攻撃を防ぐ度にインターバルが必要なのだ!どこまでもつか!」
右、左と交わした後、真ん中の避け切れない位置にナブの拳がつき進んでくる。ナツメグは再び手をクロスさせてナブの波動を横方向へと中和させる体勢をとり、気を集中した。だが、ナブは拳を素早く止めてナツメグのクロスした手を振りほどいた。フェイントだった。
気を集中させる体勢を崩されたナツメグの懐にナブの右肩が飛び込んでくる。全体重を掛けたタックルだ。吹き飛ぶナツメグの身体。だが、それだけでは終わらせまいと次の攻撃を仕掛けるナブ。
「土遁!岩石縛り!」
風雅の忍術が発動した。
ナブの身体の周囲を岩の塊が集まって、重力の中心がナブになるかのようにどんどん身体に岩が集まってくる。
「ヌゥッ!」
岩をはじき飛ばすナブ。だが今度は岩だけではない。周囲のエーテルが霧状の水分になったかと思うと、水に変化してナブの身体にまとわりつき、岩石と一緒に氷へと変わった。フェイの唱えた氷の魔法だった。
身体の動きを一瞬だけ止めるナブ。その一瞬を見逃さなかったフェイと風雅は再び土遁と氷の魔法でナブの身体を固めていく。
「どんでもねぇ!こいつまだ生きてるぞ!」
カイが叫ぶ。
ナブの片目は周囲をジロジロと見ていた。
「今のうちだ!忘却の神殿に逃げ込め!」
風雅達が忘却の神殿に隠れた後にようやく氷の壁の魔法が解除された。なだれ込んできたナブの部下達が氷と岩によって固められたナブの周りへと集まる。そしてそれらからピリピリと音がした後に氷も岩石もその波動の力によって吹き飛ばした。
「追いますか?」
部下がナブに問う。
「気をつけて入れ!」
部下のオークが3体ほど先行して神殿へと侵入していった。その様子を見届けながらズークが言う。
「このまま追うのですか?」
「あたりまえだ!ここしか出口がないだろうから、自ら袋小路へとはいったも同然だ。マヌケどもが」
最初に入った3体に続いてオークが神殿へと侵入していく。それから暫くの間、時間をおいてから、ズーク先発隊から何の連絡もない事に気付いた。
「奴らにやられたのでしょうか?」
ズークの部下が聞く。
「嫌な予感がする。どうなっているのか調べてこい」
ズークの部下も内部へと侵入していくが、それからまた暫くの間時間が経過した後も何の連絡も帰ってこない。
「どうなってるだ?」
「また調査隊を向かわせますか?」
「うむ。今度は入って中を見てからすぐに出てこい」
ズークも神殿の入口まで向かい、彼の部下が中へと侵入する様子を見届けようとしていた。今度は2匹のオークが神殿に入っていく。その様子を後ろから見るズーク。オークが神殿へ足を踏み入れて暫く進んだ後の事だ。突然その姿が消えた。
「な、なにぃぃ!?」
驚いたズークの他の部下達はあわてて中に入ろうとするが、それをズークは止めた。
「危険だ!ここは何かあるぞ!」