27 日本海の死闘 2

この年は雪が沢山降る。
とくに日本海側はひどい物だった。海の上にも積もるんじゃないかっていうぐらいに大きな雪の塊が空から降り注いで視界を塞いでいる。
俺は今、アサルトシップから降下された後の日本海海上に浮いている。
そんなところに浮かんでいて寒くないのかと言われればそれほど寒くはない。俺の身体は変身後はどうやら痛みに対する感覚が鈍くなり、そのついでに寒さも暑さもそれほど感じ無くなるっぽい。それが人間が生命を維持する上で必要な感覚なのは分かっているけど、今俺の生命を維持してるのはコンピュータらしいからね、俺にそういう情報を伝える必要はそれほどないんだろうかな。
「敵はどこ?」
視界が悪くてどこに船があるのかもわからない。晴れていたら大陸の方まで見えるという話だ。そう、俺は日本海海上に来たことは一度も無かった。だから、その一番最初がこういう形になった事だけは残念だ。
『キミカちゃん、敵はその地点から南方よ』
「南方って言われてもね…」
『今は太陽がある方向』
太陽、太陽…っと。どこを見てもうっすらと明るいだけで太陽を形作るあの丸く輝いてるものは無い。視界は雪でほぼゼロだった。
『太陽なんて見えないよ。雪でばっかり』
と、その時だった。
ごぅんッ!と爆発音。それから衝撃波が波を、雪を吹き飛ばす。俺の身体には衝撃波で水平方向に飛んでくる大粒の雪に包まれて真っ白になりつつある。
「いた!」
衝撃波の中心が今戦闘中の場所だ。俺は爆発音が聞こえた付近へ向かって飛んでみる。何かが浮いている。木片?船の一部か…これは難民が乗船しているっていう船の一部だな…。既にその木片にも雪が積もっているから、ちょっと離れると何が浮いているのかわからない。よく見れば木片以外にも色々浮いているのがわかる。例えば船の部品であったり、例えば浮輪であったり、例えば救命胴衣であったり、例えば人の形をしたものとか…え?
俺はその一つを引っ張り上げてみる。
人だ。…死んでる。
どんなに服を来てても冬の海に投げ出されたらそれだけで死ぬのか。服装からすると海上保安庁の人ではない。難民の死体だった。
ごぅんッ!と再び爆発音。それから銃声。
雪で視界は遮られているけどその向こうには船があるんだ。巡視船はそれほど重装備じゃないはず。だったらこの爆発音って…テロリストのアンドロイドの奴か!
俺はそのまま波に身体を当てないように空を飛んで爆発音がする方向に向かった。