27 日本海の死闘 1

その日は普通に学校に行って普通に午前中の授業を終わらせた。お昼ごはんを食べに食堂に向かう途中でケイスケが慌てて走ってきた。そして俺を友達から引き剥がしてから、テロリストがまた出た、云々の話をする。
それはとても寒い日だった。
俺が住んでるところは偶然にもそうでもなかったけど日本海側はすべからく1メートル級の積雪、それ以外の平野部でも10センチは積もるというニュースを今朝やっていた。
このクソ寒い日でもテロをしようとする奴はするんだろうな。どういう神経してるのやら。そして、テロリストというとどうしてもスカーレットの事が頭に思い浮かんでくる。次こそは仕留める!!なんて思っていたら、ケイスケも何が起こっているのかよくわからないと言うのだ。
とにかく『悠長に構えている時間はない』という緊迫した雰囲気が伝わってくる。それはケイスケからもミサトさんからも。
ヘリで南軍の基地に向かった後はアサルトシップで現地に降下するという作戦だった。前回、米軍の基地に降下した時は輸送機だったけど今回はそういう翼のある航空機ではなくてグラビティコントロールを行って飛行を行うタイプの航空機だという事から緊急性がある事だというのがわかる。アサルトシップ(強襲艦)は映画の中で登場しているのを見ただけで実際のそれは基地の中で動いてない状態のを見たことがあるだけだ。種類も様々で洋上の駆逐艦ぐらいのサイズもあればヘリと同じぐらいのものもある。
南軍の基地でそれに乗り込む際には既に宙に浮いている状態だった。この航空機はエンジンがオンの状態では既に離陸しているのだ。ヘリよりかは二回りぐらい大きく、今回は輸送を行うだけの任務にも関わらずミサイルやら機関砲などの重装備だった。そういや映画の中でもこれが爆撃などの役割もしていたかな。この航空機の特徴としてどんなに派手な飛行をしても搭乗者には重力の変化を感じない事がある。これも映画の中の知識だけどね。やっぱりそれも当たっていて、乗り込んで基地を飛び立った時も身体に重力の変化を感じる事は無かった。
ソレでの移動途中。
「キミカちゃん、今情報が入ったわ」
「うん」
「国籍不明の不審船数隻が浅茅湾(あそう)沖に現れたそうよ。船には難民らしき人々が乗せられてる。海上保安庁の巡視艇が不審船を拿捕しようとした時に、正体不明のアンドロイドらしきものが攻撃を仕掛けてきたらしいわ」
「不審船の中に潜んでいたって事?」
「いいえ。どこからともなく現れたそうよ。難民に向かって攻撃を仕掛けてる。攻撃許可を貰った巡視船が応戦したんだけど、まったく歯がたたないらしいわ…キミカちゃん。話を聞いただけでも強敵よ」
「武器もちゃんとあるの確認したし。大暴れしてもOK?」
「もちろんよ。でも、危なくなったら逃げて」
「軍からもイージス艦とかの協力はあるの?前回みたいに」
「それは…」
言うのを躊躇うミサトさん
ケイスケが言う。
「今回は軍の協力は得られない…。キミカちゃんが呼ばれたのはそういう事もあるんですにぃ…」
「え?」
「海の上の国境付近での戦闘だと、後々、色々な方面から面倒な事になるんですにぃ。国際的な意味で」
「人の命が掛かってるのに、一番力がある軍が出れないってどういう事なの…ったく、政治とかつまんない理由で」
「キミカちゃん!」
ケイスケが俺の手を握ってくる。
「は、はい…?」
「もし危なかったら逃げてくだしぁ…」
「大丈夫〜大丈夫〜」
そう、俺の敵に対する認識は『スカーレット』という敵を今まで知っているから、正体不明の敵が現れたとしても、まずはレベルだったのだ。