70 ニダニダ 4

ソンヒの放った銃弾を合図にメイリンが飛び出す。
他の雑魚の不良どもを矛の裏側で突き上げて失神、失禁させる。さすがは武道の心得があるメイリン。ただでさえ強い彼女の一撃は弱点を的確に狙うことでダメージを確実に与えていく。
あるものは金玉を狙われてうずくまって動けなくなり、あるものはみぞおちを狙われてうずくまって動けなくなり、あるものは顎を狙われてそのまま失神したり…。
メイリンが他の雑魚を倒してくれるので俺はソンヒに集中出来る。奴の放つ銃弾をバッキバキにブレードで弾き飛ばしながら接近して横一文字を胴に入れる。が、ぎりぎりのところでソンヒはナックルのような装備で俺のブレードを受け止めた。
「なッ…!」
これはソンヒの声だ。
ガリガリと嫌な音を立てながらヤツのナックルが俺のブレードの中に削られて吸い込まれていく。そう、グラビティーブレードは弾き飛ばす以外に吸い込んだり出来るのだよ。
それにしてもこのナックルもしぶといな。特殊な物質で出来てるのか、ナックルそのものにバリア機能があるのか、普通ならノーバリアフィールドの装甲ならグラビティブレードで吸い取ると確実に折れるか無くなっちゃうのにしぶとい。
命の危険を感じたのかソンヒは地面を蹴り上げて空に飛び上がって後方へとジャンプ。これだけ見ても十分にドロイドバスターとしての能力が備わっていると思って間違いない。どっかから技術をパクって自分の身体に組み込んでるんだ。
しかも。
奴はまだ変身前じゃないか。それは俺も同様だけど、奴が調子にのって変身して襲いかかってきたら俺も生身の身体では耐えられない。変身しなきゃダメなんだけど、ここで変身するのはマズイ。学校の連中がみてるからさ。
「ククク…ここでウリの真の力を…」
ってソンヒが言いかけたところに立て続けに俺のブレードの攻撃を集中させる。変身する暇は与えない。とりあえず学校から離れたところまで誘導してから戦闘するしかない。
「くッ!!卑怯な!日本人!!!」
「だ・ま・ら・っしゃ・い!!」
俺のブレードさばきがソンヒのガードするナックルをどんどん削っていく。しかも喧嘩慣れしてないのかソンヒの腕は普通の女の子のように衝撃にただただ耐えるだけのものになっている。今にも腕が吹っ飛ぶんじゃないのか。
押して、押して、押して、押しまくって奴を学校の生徒から見えないところまで弾き飛ばそうとするが、なかなかうまくいかない。
しかし、ブレードで斬るように見せかけて肘鉄を食らわせたのには奴も驚いたようで、身体のバランスが崩れて片足が反転、その時に「カチリ」と明らかに何かヤバいものを踏んだ感じになった。
俺とソンヒは地面を見る。
どう考えても地雷のような『何か』がアスファルトに埋め込まれてて、ソンヒがそれを踏んづけたような形になってる。これは古くからそこにあったものじゃなくて今しがた埋めこまれたような雰囲気があるぞ。
「やっば!!あぶな!!」
俺は気付いてジャンプして後方へと飛ぶ。
「な、な、な…これは何ニカ?」
「…地雷じゃないの?」と、俺は爆発してもある程度は防げるぐらいの位置からソンヒに話し掛ける。
「うわああああああああああ!!!!なんでこんなところに地雷があるニカ?!日帝の仕業ニダ!!」
しらんがな。
そんなところに地雷仕掛けるのはあの人しかいないじゃないか。
「HAHAHAHAHAHAHA!!」
ほら、あの人。
「マヌケガ一人、地雷ニ一人、飛ンデ火ニイル、キム・◯ョンイル」と、手で「ぱんッぱんッぱんッ」と拍手をしながらしたり顔でソンヒの背後に現れるのはコーネリアだ。
「オヤァ?ドウシタノデスカァ?動ケナイノデスカァ?」
顔を真赤にして怒り心頭のソンヒは、
「ファッビョーン!!!」
と変な叫び声を上げた。
それから、
「お前らの顔、覚えたニダ!!」
とか負け犬の遠吠えのような事を言う。
俺はソンヒが地雷から足を外さず動かないのをいいことにブレード着ている制服を斬り刻んで素っ裸にしてさしあげた。
「なな、ななな、な、なにをするニダーッ!!!」
胸や股間を隠しながらも地雷からは離れないでいるソンヒ。
俺達までこの『素っ裸の人』と同じように思われたら嫌だから俺のコーネリアは携帯の写真機能でソンヒの裸をパシャパシャと数枚収めた後、清々しい顔で校舎の中へと帰っていったのだった。
ちなみ俺達が離れた後にソンヒはドロイドバスターに変身したのだろう、地雷がそれで大爆発を起こして、ヤツのバリアが防いでいるエフェクトが見えた。
大爆発は体育会系の部活の部室棟も吹き飛ばして道路も信号も吹き飛ばして交差点の向かいにあったコンビニ2階の窓ガラスを全部吹き飛ばして隣にあった八百屋の陳列した商品を吹き飛ばしたところで収まった。どんだけ巨大な地雷しかけてるんだよ、このバカ。
後で消防車やら爆弾処理班が出動する大騒ぎが起き、そのどさくさにまぎれて不良達も朝鮮版ドロイドバスターも姿を消していた。
夕方のニュースには対戦時の中国軍の不発弾が爆発したのではないか、って前提で騒がれていた。そもそも爆撃すら受けてないのになんで不発弾なのかとかツッコミどころが多すぎるけど「今までもそしてこれからも色々と爆発する中国なら違和感はない」などとコメンテーターは番組を締めくくろうとしたところで司会が「中国ではなく中国地方ですが…中国というキーワードが入っているのであながち大げさな推論ではないでしょう」と締めくくった。