96 アンダルシア・コンフィデンシャル 10

「一体何の用ニダ!!」
俺が近づくと怯えながらニダ…じゃなかったソンヒが叫ぶ。
そこにユウカが間に入ってきて、
「持ち物検査をします!」
と言い出す。
「は、はぁ?!この女、何言ってるニカ?」
突然の突拍子もない発言に呆れているソンヒ。
「うちの学校の生徒が麻薬を買わされたらしいのよね、あのジーニアスバーで!!で、誰から買ったのか調べてるの!」
「ウリは麻薬なんて売ってないニダ!なんでウリが麻薬を売ってるとか見た目とかで判断してるニカ?!差別ニダ!人権侵害ニダ!謝罪と賠償を要求するニダ!!ニダニダ!!あ!!何をしてるニカ?!勝手に食べるなニダ!!やめーろー!!」
なんかメイリンは不良達の囲んでる肉焼き網からいい頃合いで焼けてる肉を箸で啄んで食べている。
「こいつ…一番食べ頃の肉だけを…!!!(プロか!)姉御!もうコイツらの暴挙は許せませんゼ!やっちまいましょう!」
あいも変わらず肉野郎(額に肉って書かれてる男)は俺達の喧嘩がしたいらしいな。しかしソンヒはそんな肉野郎の頭をペシッと叩いて、
「お前はコイツ等の恐ろしさがわからないからそんな事を言えるニダ!キミカだけならともかくアメ公と中国乞食がいるから無理ニダ!」
俺だけならともかくだトゥ?!
「よーっくわかってんじゃん…それなら話は早いや…第3次朝鮮戦争勃発ですね。朝鮮 vs アメリカ・中国・日本・台湾の4大連合軍で楽しい楽しい戦争を始めましょう…(白目」
と俺は顔を引き攣らせ拳をポキポキと鳴らしながらそう言った。
「ウリは負ける喧嘩は受けないニダ!」
その時、ソンヒはメイリンが口に運ぼうとしていた肉に指先をツンと触れたのだ。肉に何をしてるのかと思ったけど、よくよく考えるとソンヒの能力って…。
肉は一瞬にして手榴弾のような形に変形。
驚いて箸を話したメイリンの目の前で凄まじい音、光…。これはフラッシュバンっていう爆弾じゃないか!
店内は騒然とした。
強い光がおさまってから既にあの野郎はいなくなっている。
「ちょっと…なんなのぉ…」
耳を抑えた状態でユウカが言う。
「ソンヒが麻薬を持ってるよ!」と俺が叫ぶ。
ちなみにこれは嘘。麻薬を持ってなかったとしても別に構わないのだ!前回の恨みを晴らすチャンスであるからして、例え4対1であっても(マコトは既に泥酔状態だから3対1か)卑怯じゃないよね。だって麻薬を持ってるかもしれないんだもの!
俺達が店の外へと駆け出そうとした時、不良達は自分たちのボスが逃げているというシチュエーションを知ってるからか一番近くにいたコーネリアの身体を引っ掴んだ。
「俺達がお前等の相手だ!」
と不良がモノ申す。
それ言ってみたかったなぁ…中二病っぽいセリフ。しかし、そのセリフを言うのが君達の役目なだけで、後はただ打ちのめされるのだ。
俺はブレードを引っこ抜いてコーネリアに掴みかかっている男の喉元に当てて「待て待て待て待て!」と言わせる。その間にコーネリアはあの「孫悟空のアレ」を作り出していたのか、連中の身体や頭に黒い何か金属質の輪っかが付いている。
「HeHeHe…㍉」
「うッ!」
「㍉㍉㍉㍉㍉㍉㍉㍉㍉」
「うわぁぁぁぁぁ!!」
もがき苦しむ不良達。
追手がいなくなったら後は店を悠々と出るだけだ。
そしてソンヒを追いかける。
逃がしゃへんでェ?
『発信機ガツイテマーッス!』
ほうほう!
俺は素早く、そしてスタイリッシュにaiPhoneを取り出した。そこには美しく洗練されたマップビューが表示されて発信機がついているソンヒの姿が赤い点で点滅しているのだ。商店街を逃げ惑うソンヒは俺達に居場所が把握されているためどこに隠れてもすぐに見つけ出して追いかけっこをするというのを繰り返した。3ループぐらいでいよいよ俺達も本気でソンヒを捕まえる段階まで持って行こうとしていた。
正直飽きたのだ。
「ソンヒ!」
「ひぃぃぃぃぃぃ!!」
メイリンが怒鳴る声が聞こえて後、ソンヒの叫ぶ声が聞こえる。そして、メイリンのドロイドバスターとしての能力『エナジーフィールド』が発動しエネルギーの壁がソンヒの前に現れ通行を塞ぐ。
「Hehe…Stupid!」
「はぇぁ?!」
コーネリアのからかうような声が聞こえて後、ソンヒの拍子抜けしたような声が聞こえる。遠目で見る限りはコーネリアのドロイドバスターとしての『物質を変化させる』能力が発動してソンヒの前に壁を突然出現させたのだろう。田舎の商店街だった場所は地形が変わるダンジョンへと変貌したのだ。
「グー…スー…」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
酔っ払って倒れて寝ているマコトとソンヒが遭遇したみたいだ。しかし、マコトは何もしていないにもかかわらずソンヒは叫び声をあげている。そうとう恐怖に包まれているらしい。寝ているマコトが何か攻撃をしかけてくるように錯覚したのだろうか。
3方向から追い詰められたソンヒ。
一体どうなってしまうのか?!(鼻くそホジホジ