94 Dの食卓 7

「逃げるぞ!」
そのボディーガード姿の男はそう言ったのだ。
しかも俺を見て。まるで俺が超危険人物みたいに。
スタバ前の駐車場にて、ドロイドバスターと推測される金髪美少女とその連れの長身の男の2名との遭遇で俺がちょっと本気をチラ見せすると連中はビビって突然の逃げるぞ宣言だ。
しかし相方の金髪美少女のほうは納得いかないみたいだ。
「はぁ?!逃げるって?!もう遅いわよ!」
「あー!クッソォ…勘弁してくれよ!」
二人のやり取りが読めない。
「ハデに行くわよ!」
そう金髪美少女が言った。
彼女は人差し指で眉間を押し上げるような仕草をした。金髪美少女はメガネを掛けているわけではないけど、仮にメガネを掛けていたとしたらそういう人はよくやる仕草だ。
その時、地面から木でも生えるかのようにアスファルトが盛り上がってその美少女の身体を包んでいく。いや、変化しながら…これは、ドロイドバスターの変身ってやつじゃないか!!
コスチュームはコーネリアのようなゴシックな黒を基調としたドレスには似てるが肩が露出して袖が長い(ちょうど初音ミンクのベースコスチュームアレに似ている。ニーソックスも履いてるし)そして金髪の髪はそのままに目の色は右が赤で左が青というオッド・アイ状態だ。
青がグラビティコントロールの能力だとすると、赤はコーネリアやメイリンのドロイドバスターの能力だと考えるのが妥当だ。つまり、両方の能力を持っているとも見てとれる。
そっちがそのつもりなら…不本意だけど相手になってあげよう。
俺もドロイドバスターに変身。
と、同時に、美少女ドロイドバスターは地面に手をバンッとつけた。
変身前の比ではないぐらいの地震かとも思えるような揺れの後、アスファルトが次々とドロイドに変身していく。
その一体が飛びかかってくる。過去の大戦時の映像特集には必ずと言っていいほどに登場しているレーザーブレード両腕に搭載した「ハンター」と呼ばれるドロイドだ。その攻撃を身体を除けって軽く回避すると、半回転させて回し蹴りを食らわす。弾き飛ばされたドロイドは信号待ちのトラックのフロントに突っ込んだ。
一方でマシンガンで狙いをつけていた多脚戦車式ドロイドには地面をグラビティコントロールで盛り上げて弾を防ぎ、自分で言うものなんだが細くて美しい俺のウエストを掴んだドロイドと同じタイプのゴリラみたいな奴は同じく回し蹴りでバリアを消滅させたあと、ブレードでメッタ斬りにした。ほぼボロボロに崩壊したドロイドの身体を踵落としでアスファルトの海に沈める。
あのボディガードの男はドロイドバスターじゃないようだ。
「クソッ!めちゃくちゃ強いじゃねーか!逃げるぞ!」
男が叫ぶが聞いちゃいない。
「ふふんッ!これは避けれるかしらァ?」
何か構えている。これは…ビーム砲だ。あの金髪美少女、腰にビーム砲を抱えて俺を狙っている。っていうか…ビーム砲…じゃないぞ、あれ、俺が持っているBFGじゃないか!!
ええい!回避するより吸い込むか。面倒くさい。
マイクロブラックホールを作り出し、BFG発射のタイミングでBFGに向けて発射。光も何もかもすべてを吸い込む漆黒の穴はBFGのエネルギー弾を吸い込んで、ついで多脚戦車タイプのドロイドもアスファルトの断片と一緒に吸い込んだ。美少女も吸い込みそうだったが、そこは俺が止めた。ちなみに最近会得したのだけど、マイクロブラックホールは創りだす事もできるけどどうやら消滅させる事も出来るらしい。
さて、トドメを行きますか。
BFGがチャージに入ったからか、次はレールガンみたいな銃を創りだして美少女は俺に向かって放つ。それらを端から叩き落として一気に彼女との距離を縮めた。
しかし、あと一歩でブレードの射程内に来そうになった時、俺の前に飛び出てきたのだ。あのボディーガードっぽい男が。
俺はブレードを寸止めせざるえなかった。
「ソラ!」
ソラっていうのか、この男は。
DQNがつけるようなキラキラネームだな。
「待て!待ってくれ!」
とかボディーガード男は言い出す。
そして、
「俺に免じて許してやってくれ!」
と言うのだ。
「え?な、なに?」と俺はすっとぼけた声で答えた。
「アンタなにやってんのよ!どきなさいよ!危ないわよ!」
「だから!まだ敵かどうかもわかってないのに攻撃しかけたのはお前だろうが!そりゃ反撃するだろう!」と金髪美少女を叱り飛ばす男。
「え、だって…」
「変身を解け!」
男に怒られたからか、しょぼんとした顔でその金髪美少女のドロイドバスターは自らの変身を解いて元の状態へと戻った。
まぁ、この男に免じて刀を納めてやるか。
俺も変身を解いた。
どうやら彼等は俺の事を敵だと思ってたらしい。
それにしても…さっきのあの話しぶりだと今までにも他のドロイドバスターに狙われてたって事になる。イチとかジライヤとかスカーレットに狙われてたのかな?
「ほら!お前も謝れ!」
そう言って男は190はあるであろう長身から降ろされた腕を150か160ぐらいの小柄な美少女の金髪のファサファサした頭につけて、ガシッと掴むと下へと無理に下ろした。強制ごめんなさいだ。
「わ、悪かったわよ…」
「ごめんなさいだろ?!」
「ご、ごめん(小声で)なさい…」
まぁ、今日のところは…、
「今日のところはそこのハンサムボーイに免じて許してあげるよ」
と満面のドヤ顔で俺は答えた。
「むッかつく!!」
やっぱり懲りてないな。
金髪美少女は俺を見て地団駄を踏んで怒りを表現した。