94 Dの食卓 8

その美少女は名前を「柏田希沙良(かしわだ・きさら)」と言った。
どう考えても日本人の名前だし、エロゲに出てきそうな金髪美少女の姿でエロゲの登場人物にありがちな変な名前なのか質問したい気分に駆られたがカオス度をより一層深めそうなのでやめておいた。
そして、ボディーガード風の男は名前を「天月翔(あまつき・そら)」と名乗った。金髪の美少女との関係を聞いてみたが、どうやら俺の想像どおり彼女のボディーガードらしい。
長身でサングラスの男「ソラ」はどうしてこのような顛末になってしまったのかキサラに聞き出していた。俺とキサラがなんで喧嘩することになったのか、についてである。
キサラ曰く、このスタバでドヤってたら俺が入店して来てドヤりだしたのでドヤり返していてエスカレートしてきたという感じの話をした。まるで学校の先生になんで喧嘩したのか問い詰められて渋々答えてる男子小学生みたいな口ぶりで、ダラダラと話していた。
あんぐりと口を開けて呆れた顔で聞いていたソラは最後まで聞き終えると両手で顔を覆ってから「はぁ…」と深い溜息をついた。そして、
「お前は小学生か!」
とキサラを一喝。っていうか、そのセリフ、思いっきり俺にも聞こえて、俺まで小学生みたいに思えてきたじゃないか!!
それからソラは俺のほうに振り返って、
「迷惑かけてスマン…っていうか、アンタ、ドロイドバスターなんだろ?なんでドロイドバスターがこんなところに?」
口調からすると他にもドロイドバスターに出会ってきたかのような感じを受ける。この人達は何者なんだろう?まぁとにかく、一つだけ思いっきり引っかかる事がある。
こんなところにいちゃぁいかんのかよ!って事だ。
「ドロイドバスターだって学校にも通ったり会社で働いたり、普通に生活してるんだよ!」と俺は怒った。当然である。
ソラは驚いた顔をしてから「あぁ、いや、スマン。今までそういうタイプのには出会ってなかったからな」と頭をポリポリ掻いて謝る。
キサラも驚いた顔をしている。俺に向かって、
「学校…学校に通ってるの?アナタ」と聞いてくる。
「そりゃぁ高校生だからさ…っていうか、さっきからそんなに珍しいの?他にも学生でドロイドバスターなのは沢山いるけどなぁ…」
「…他にも沢山って、何人いるの?この街にいるの?」
「えーっと…(コーネリアにメイリンにマコトに…後は他校だけどソンヒ…それからにぃぁも入れれば)5人かな。この街に」
「ご、ごご、ごご、ごごごごご、5人ですってェ?!」
ソラは顎に手を当てて、
「その5人、いや、アンタと合わせて6人が同時に襲ってきたら…キサラ、お前も俺も逝ってたな…」
キサラは相変わらず驚いたまま、
「何、何なのよ?アンタ達6人は何?6人揃って戦隊でも組んでるの?何よ?何と戦ってるの?何を企んでるのよぉ?!」
と俺の肩をガシっと手で掴んでガクガクブルブルと揺らした。その結果ヘッドバンドをする事になったしおっぱいは揺れるし身体は足を中に浮かされる結果になるし、やめてくれよ酔ってしまうよ。
その両腕を払いどけて、
「だから高校生って言ってるじゃん!1人は別の学校だけど、5人は同じ格好に通ってるよ!そこで勉強してるだけじゃん!!」
と一喝。
手を放してもキサラはまだ驚いている。
すると、ボディーガードのソラっていう男が「なぁ、もしかして…」とヒソヒソとキサラと話をし始めたのだ。時々キサラは「えぇ?」「いやだって…」「それは…」などなど、わざと俺の気を引こうとしてんじゃねーのかって言うぐらいに反応しまくっている。
ひと通り話が終わってからキサラは俺に、
「アンタ、もしかして石見佳祐って人、知ってる?」
え?
今なんて…。
ケイスケの関係者なのか?!
これには俺も驚いた。
「えっと…ケイスケなら一緒の家に暮らしてるけど…あなた達ってケイスケの知り合いなの?どういう関係なの?」
俺は聞いてみた。
これにはソラのほうが答えた。
「以前、師匠に頼まれて…あぁ、師匠っていうのはコイツ(キサラ)の先生みたいなものだな、石見佳祐って人の家の地下に研究室を用意したんだ。まぁ、作ったのはキサラだが。それはドロイドバスターに関係する機械でひょっとしたらこの街にドロイドバスターが多いのは、その石見佳祐って人が絡んでるんじゃねーかと思ってたが」
「ま、マジでェ?」
「マジだ」
あの研究室を作ったのは大工さんじゃないのか?!
「あの機械の設計も?ケイスケが作ったと思ってたけど」
これにはドヤ顔でキサラが答えてくれた。
「そりゃぁ設計図はケイスケが作ってたわよ。あたしはそれをもとに機械をつくっただけ。ほら、あたしのドロイドバスターとしての能力は物体を別のものに変換する能力だからさ」
う〜ん…。
う〜ん……。
時系列で並べるといまいちわからないぞ。ケイスケがドロイドバスターの研究をしているのは知ってるし、あの機械が産み出す為のものだっていうのも知ってる、じゃあ、この人達は何なんだ?どうやってドロイドバスターになったんだ?
「キサラはどうやってドロイドバスターになったの?ケイスケのあの機械はキサラが作ったんじゃないの?」
「あ〜。うん、まぁ、そうだけど、あたしの場合は特別なのよ!」
「と、特別ゥ?」
「そうよ!特別製なの!(ドヤッ」
ヌゥゥ…そのドヤ顔がムカツク。
ん?待てよ…もしかして…。
「じゃぁ…これも(キミカ部屋からBFGを取り出す)」
BFGはアスファルトに重さでめり込む。
「え、ちょっ!!これ…」
「これもキサラが作ったの?」
「そ、そうよ。…やっぱりケイスケの関係者なのね。アンタがこれ持ってるって事は。これは確かにあたしが作った奴よ!柏田重工の製品の設計図をもとに作ったんだけどね。っていうか、アンタ今どっから出したのよ?こんなクソ重いものを…まるで手品みたいに」
「どっからって…キミカ部屋から」
「なんなのよ!その『徹子の部屋』みたいな怪しげな名前は」
「まぁ、その、異次元空間みたいなもんなんだけどね」
「い、異次元空間?アンタ!ドロイドバスターの能力は何なの?」
「あぁ、これ?えっとねぇ…グラビティコン、」
「違うわよ…それはグラビティコントロールじゃなくてディメンションコントロールって言うのよ!次元を制御する能力よ!!」
「でぃめんしょん…コントロール?」
キサラとソラはお互い、顔を見合わせながら慌てている。
「嘘でしょ…こんな能力、本当にあったなんて…」
なんだよ、その驚き様は…。
「別に驚くほどのものじゃないけどねぇ〜、ジライヤも使えるし」
「じ、ジライヤァ?!誰なの?またドロイドバスター?その子も同じ学校にいるの?」
本当に何も知らないらしい。俺は今、同じ教室にいるジライヤを想像して吹き出しそうになったぞ。
「いやいや…ジライヤは、まぁ、その、中央軍にいるドロイドバスターだけどね(司令官って事は伏せておこうか…)」
さっきまで驚いていたキサラだったが俺の話を聞いているうちにだんだんと興奮してきたらしい。顔を赤くしながら「ねぇ!どこの学校に通ってるの?!ドロイドバスター達が通ってる学校に行ってみたいわ!」
「え…えぇぇ?!」
「行って何するの?」
「入学するのよ!決まってるじゃないの!」
「「えぇ?!」」と俺とソラは声をハモらせて驚いた。