94 Dの食卓 6

さて。
今日もスタバに行きましょ。
俺はキミカの部屋にMapProを格納して、颯爽とスタバ着。
カウンターで注文して、注文した品物が届いて〜の、それをトレーに入れて〜の、客席へ、
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁッ!!」
(ガッシャーン!)
久しぶりにジーパン刑事になってしまった。
そして思わずトレーを落としてコップをブチ割ってしまうというとんでもない粗相をしてしまった。しかし、それは仕方がないのだ。
何故なら、俺の視界に飛び込んできたのは王座の隣に歪(いびつ)に積まれた機器。見たことが無い機器だ…いや、見たことならあるぞ。しかし、どれもこれも本来ならここにあるべきじゃないものばかりだ。企業のサーバ部屋などに置いてあるもの…例えばルーターやら電磁操作盤やらホストコンピュータやら…そんなものが置いてある場所にあるはずの…『MapEnterpriseServer』があるのだ。
MapEnterpriseServerというのは企業向けに作られているMapple社のサーバ機だ。WWWからの大勢の同時アクセスにも耐えられる、検索エンジンにも指定されている、まさに見た目・中身ともに文句を言わせない高性能を体現したようなものだ。
「な、な、なんで…こ、これが…」
俺は震えていた。
思わず声も出ていた。
オシッコ漏らしそうだ。
というかちょっとだけ漏らした。
ジーパン刑事と同じように殉職しそうな気さえする。
そのサーバ機器の間からヒョコっと顔を出したのは…アイツだ。あの金髪の美少女。クソ…あンのヤろう…。
「フッフッフ…」
笑ってやがる!
笑ってやがるぞ…!!
「見た?見たァ?これがあたしの実力よ!!スタバにMap Enterprise Serverを持ってくるのはMapple教徒として『と・う・ぜ・ん』よね?これ以下のスペックはジョブズに認められないわ!」
くっそー!!
ありえねー!
ありえねーぞ!!
何がありえないって…MapEnterpriseServerが「ぶおー」と凄まじい音を出して熱気を出していて店内の温度はサウナみたいに上昇している。アイスを注文した客はソレがあっという間に原液に変わってるじゃないか!!そもそもこのマシンは冷房が効いたコンピュータ専用の部屋で使うものなんだよ!!なんでドヤ顔してんねん、アホか!!
っていうか、めっちゃアツそうにパタパタとうちわで自分を仰ぎながら俺に向かってドヤ顔をするその金髪美少女がある意味痛い。
その時だった。
店の中に1人の客が現れた。スタバの客なら入店後すぐにカウンターで注文をするがまるで誰かを探しているようにキョロキョロと店内を見渡している。…なんだか急いでいるような感じすらする。ボディーガードっぽい服装の背丈の大きな男で、男の俺が言うのもなんだけど黒髪でハンサムな顔つきにサングラスがよく似合っている。
平民席ばかり見てるようだ。しかし、すぐさま王座や側近席を見て、
「あ!ここにいたか!」
とその金髪の美少女を見て言う。
「な、なによ…」
知り合いなのかその男を見て金髪美少女は返す。
「熱ッ!っていうか、それサーバルームで使うもんだろ!バカか!」
あぁ、この男、俺が言いたいことを言ってくれた。
「す、スタバではこれが標準装備なのよ…」
とか無理な言い訳をしてくる金髪美少女。
「世界中どこのスタバ見てもサーバルームで動かすはずのMapEnterpriseServerを動かしてサウナ的温度になった部屋の中で我慢大会する店はないぞ!そんな店があったら俺が全力で否定してやる、それはスタバではない、ただのドヤ場だ!!」
うんうん…。俺の言いたい事を全部言ってくれたよ。
「いや、だから、その、あの子が」
(と俺をそっと指差す金髪美少女)
てンめぇ…俺のせいかよ!
「人のせいにすんな!」
よし!気持ちよく俺が言いたいことを言ってくれるな!ハンサム君!
190はあろうかという長身がスススーっと店内を早歩きで金髪美少女に近づいていき、美少女の金髪をペシッと叩いた。
「いてっ」
「ほら!早く片付けて帰るぞ!」
ワロタww
なんだよ子供扱いされてるじゃないか。
「重ッ!どうやって店内まで持ってきたんだよ?!」と言う男をよそに、金髪美少女はスタスタと店の外へと走っていく。すると、店の外のほうでピカピカと何かが光っている。強い光だ。その後、俺はさらに度肝を抜かされることとなったのだ。
この美少女は何者なんだ?
ドロイドを引き連れてきたぞ。
そのドロイドは店内に入ると、テーブルを軋ませていたMapEnterpriseServerを次から次へと外へ運び出している。
その間もずっと二人は言い争いをしている。最初はお嬢様とボディガード、という関係かと思ったのだが、話し方からすると彼女と彼氏という関係っぽい。でもあまりにも不釣り合いな感じがする。
しかし。
勝利だ。
ルール違反を犯した奴がスタバを退場していく様はとても見ていて面白い。いつの間には俺はドヤ顔をしてその金髪美少女を見ていた。
そして駐車場のほうへとドロイドは移動し始めたので、俺はつい興味本位でその後をつけていってしまった。
まだ二人は言い争いをしている。
「だから!あの女があたしを、」
「さっきのあの女の子か?そりゃMapBookAirを持っていても別に変じゃないだろ。変なのはスタバにMapEnterpriseServerを持ち込んでサウナで我慢大会をしているお前だ」
「あ!居た!こっちを見てるわ!ど、ドヤ顔よ!!」
あ、やべ、見つかった。
俺はそそくさと店内へと戻ろうとした。
と、その時、俺の隣の地面がモリモリと盛り上がるじゃないか!
どうなってんのって思っていた時、それは2足歩行タイプのドロイドへと変わったのだ。どういう事だ?地面に埋めてあった?いや、まるで地面がドロイドへと変化していったような…。
変化…?!
あっちゅうまにドロイドは細い(自慢じゃないが)俺のウエストを引っ掴んで空高くへと持ち上げた。
「許さないわ!私の素敵なドヤ・タイムを邪魔した罪は償ってもらうわ!ほら、泣きなさい!わめきなさい!漏らしなさい!」
この能力ってまさか、コーネリアの物体変化の技じゃないのか?
「おいバカ!一般人相手に何やってんだ!しまえ!」
「ふふーんだ!ちょっと驚かしてあげるだけよ」
やっぱりそうだ。あの『一般人』ってキーワードが『ドロイドバスター』だって自己紹介しているようにしか聞こえない。
俺はグラビティブレードを引っ張りだすと、俺を掴んでいたドロイドをぶった斬った。あっという間に鉄くずへ変わるドロイド。
「な…」
ふふふーん!驚いている!驚いているぞ!
「ドヤラーの顔がドヤ顔じゃなくなる瞬間、それがあたしにとっての至高の喜び…」と俺はドヤ顔で言った。
「え、ちょっ、おいおいおいおい!マジかよ…!」
男も驚いている。
「ああもうッ!大当たり引いっちゃったわ!」
金髪美少女が言う。
「大当たりじゃねーよ!大外れじゃねーか!クッソォ…これだけ不幸なんだから宝くじ当たらねーかなァ…」
って宝くじィ?なんだ?
「アンタが不幸だからまたドロイドバスターに絡まれるのよ!アンタが呼んでるんじゃないの?毎回毎回…」
ま、毎回毎回ィ?っていうか、俺の事をドロイドバスターだと読みきったぞ。まだ変身してないのに。この人達、何者?