1 ドロイドバスター・キミカ誕生 1

俺が目覚めたときはそこは病院だった。
病院なのに消毒剤みたいな薬品臭がしない。なんだか肉の焼けるような臭いがした。まず周囲の騒ぐ人の声が聞こえて、足音が聞こえた。
「まだ息のある重症の患者から手当しよう!」
足音の一つが俺の隣に止まる。
どうなってるんだ。俺は目を開けて誰が側にいるのかを見ようと思ったが目が開かなかった。俺を覗き込んでいるような気配がする。
「先生、この患者さんは…」
「そりゃダメだ。もう手遅れだ」
手遅れ…?
どういう事だ?俺はまだ意識があるぞ。
「皮膚の8割以上が焼けてる。もう助からないよ」
焼けてるって…この臭いは…俺の肉が焼け焦げている臭い…なのか。なんで?なんでこんな事になってる?俺は死ぬのか?死にたくない。
俺の側にいた看護婦らしき人がため息をついた後、足音が離れていくのを聞いた。待ってくれ!俺はまだ生きている!
俺は身体を動かそうとした。
けれども手の指が少しだけ動くだけで他はもう動かなかった。
もう誰も俺の存在を無視していた。ただの焼け焦げた肉の塊なんだろう。医者もこんな俺を助けるのに労力を使わないで他の人を助ける事を選んだみたいだ。ただ通りすぎる足音だけが耳に入ってきた。きっと体中の神経も焼けてしまったんだろう。痛みも感じ無くなっていた。
このまま死ぬのを待とうと思った。
けれども、心のどこかで、誰かが俺の前に足を停めて、俺を助けようとしてくれるんじゃないかって、そう願っていたんだ。