1 ドロイドバスター・キミカ誕生 2

死を待つだけの時間がこれほど長いとは思っていなかった。
思えば本当にくだらない人生だったな。彼女も居ないし、まだ童貞だし。レールを踏み外すような勇気もなくて、ただ他の奴らと同じ事を同じ様に毎日繰り返してた。仕事をしてたなら何か違ったのかな。俺は今の人生が楽しいから生きようってワケじゃないんだな。これから先に何かいいことがあるかも知れないから、生きようって思ってたんだ。でももう、おしまいかな。
そんな時、俺の前に停まる足音があった…。
「ふひひっ…諦められちゃったねぇ。もう助からないって判断したら医者は冷たいもんだよ。今のご時世はね。無理に治療して延命措置しても医療費をバカ食いするだけだからねぇ、ふひっ」
こいつ、誰?医者か?部外者っぽい奴だ。なんでこんな部外者がウロウロ出来るんだ?クソッ…。見えない。この汚らしい(っていうかキモい)声を出す奴がどんな顔なのか見てやりたい。目に焼き付けて未来永劫、祟ってやりたい。俺の頭の中にはこの気持ち悪い声を出す奴が絶対にオタクか何かだってイメージが入り込んできた。
「僕なら君を助けられるけど、どうする?」
え?
助けられるって?
「ああ、嫌ならいいんだ。このまま死ぬ道もある」
助かるなら助けてもらいたい!俺はまだ生きたいんだ!
「でも悪いけど僕は医者じゃないから、君をただ善意で助けようってんじゃないんだよ?ふひっ…取引しようじゃないか?」
取引?なんだってやってやろうじゃないか!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!俺は生きたい!
「君はこれから悪と戦うヒーローになるんだ。それが嫌ならこのまま死ねばいい。もしそれでも生きたいっていうのなら…そうだな、身体のどこか一部分だけ動かすってのはどうかな?10秒だけ待ってあげるよ。それほど時間が残っているわけでもなさそうだしね。もう皮膚呼吸も止まっているからね」
ヒーロー?
「10、9」
そんな事どうでもいい!
「8、7…」
俺は生きたいんだ!
俺は唯一動く指を動かした。必死に動かした。腱鞘炎を起こすんじゃないかっていうぐらいに動かした。ほら!動かしてるだろ!見てくれ…。俺はまだ生きてるんだ!
「OK…。デュフフ…君の意志は受け取ったよ」