12 ごまかし 10

「…あんたら刑事は、何に従って動いている?正義か?法律か?署長か?俺にはただ命令に従って動いている操り人形にしか見えない。法律を破って、正義を曲げてまでも、親父のスネカジリの馬鹿息子を助ける理由がどこにある?一体誰が得をするんだ?社会に迷惑掛けて、親父は困る、助けてるアンタ達も困る、後戻り出来ないような悪の道に染まった本人が一番困る。もっと早くに正義も法も貫き通せば…最悪な結果は避けれるだろ?」
刑事達は黙ったままだ。
『正義』という言葉、今まで誰一人として、その意味を真剣に考えるものは居なかった。刑事とは仕事なのだ。仕事で命令に従って動く。ただそれだけのものだと思っていた。法律に関する特別な仕事。誰もがそんな認識のまま動いていたのだろう。
だが部外者の堀江から見れば、彼らが正義を軽視して仕事することが特別な仕事だと思えている。正義を国民に訴える事が出来る仕事、法の番人、その彼らが国民の誰よりも、正義に対する価値が低いのだ。特殊な環境。堀江から見ればその一言だった。
「憶測に過ぎないが…。不良どもを殺している奴はターゲットを選んでいる。木村みどり、長谷川良子を殺害した犯人達がそれだ。何もかもが闇に葬られる前に、二つの事件の犯人を法の下で裁くんだ」
刑事達は黙って頷いた。
「それがアンタ達の正義だろ?」
1人が堀江に話し掛ける。
「署長には何と伝えれば…?」
「今回の件は黙っておけばいい。後で署長が国防省に連行された時にでも言えば良いんだよ。それまで『ごまかせば』いいだろ。あんたらのボス…署長がお得意のスキルだ」