52 賢いお金の使い方 1

メイドとしての報酬は学生が貰うには多すぎる量だった。
メイの叔父さんだから金持ちなんだ。
金持ちが与える報酬は多いとは思ってはいたけど、それでもあのメイリンが破壊したお皿の弁償などに当てるぐらいが関の山だと思っていた。けれども実際に貰ったのはお皿の弁償分だけにとどまらず、各人が100万。100万だ。100万…。100万ってそう簡単には手に入らないでしょ。100万ですよ?何に使うのっていう。まぁ人一人の命を救ったから考え方によっては多いとは思えない額でもあるね。
俺は前々から欲しかったネット端末の類(…最近アメリカで発売されたものをコーネリアに頼んで取り寄せて貰った)と、ゲーム機、新しい携帯、データディスク再生用のデッキだとか、学生ならひと通り欲しいものを全部購入してまだお金が余ってる。
ケイスケは「どこにそんなお金があるんですかぉ!」と言って、「生活費とかも払って欲しいにゃん!」と言うのでじゃあ払うよ、って答えたら「身体で…」と言ってきたので無視した。
メイリンとかは貧乏だったから100万も貰ったら大喜びじゃないかな。学生として必要なものもひと通り揃えそうな気がするよ。制服のルーズソックスだとか、部屋のインテリアだとかも。
コーネリアはどうだろ?新しくでたゲームが欲しいとか前に話してたけど何か不自由している様子は無かったからな。でもコーネリアは使用用途が決まっていなくても貯金はしない性格の気がする。派手に使いそうだな。
などと思いながら、俺とナツコは登校した。
そして目の当たりにしたのだ。
メイリンがお金を使った証拠を。
メイリンは制服を一新していた。
金色だ。
黄金に輝いている。
メイリンの制服はベストの部分は確実に金色で、ブラウスの部分も金箔がまぶしてあるのがあからさまにわかった。スカートもチェック柄なんだけど全部金箔なのね。その綺羅びやかに輝いてる女子高生がこれまた金の団扇で仰ぎながら教室にいる。
こういう金の使い方を一言で言い表すと…。
悪趣味。
どうしたらこんな考え方が出来るのだろうっていうレベルの悪趣味。よく金持ちの奥さんが金の使い方に困って取り敢えず身の回りを綺羅びやかにしようとする。けれどセンスがないからとにかく高いものを並べれば良いって勘違いしてる。金が掛かっているイコール美しい、ってわけじゃない。けれど、取り敢えず相手に「私はお金持ちなんです」ってアピールしたいだけの金品購入なんだよ。美しさは二の次みたいな。
「や、やぁ…メイリン
「キミカか。キミカは制服を金にしないのか?」
するかよ!
俺は笑顔のまま首を横に降った。
「ふっふっふ…そうか」
メイリンはそう言いながら金箔が塗りたくられてる扇で俺をパタパタと仰ぐ。扇はそういう作りなのかしらないけど金箔が粉になって飛んでくる。俺はそれを吸い込んで肺をダメにしたくないので息を止めて、それらの金箔が宙をまわないようになるまでその場を離れた。
「そうだ。キミカ。私、携帯買った」
「へぇ〜。機種は何?」
「特注だ」
「え?マジで?特注って凄くない?」
なんて言ってたら、突然目の中に眩いばかりの光が入ってきて俺は危うく失明するところだった。メイリンがおっぱいの谷間から「携帯」を取り出したのだ。凄まじい光で教室にいるクラスメート達が目を瞑る。
金だ。
金色に輝く携帯。
「ちょっと、見えない、マジで」
「見えないか。見えないだろう。私も見えない」
「意味ねー!」
ったく、なんて金の使い方してるんだよ。
悪趣味なものばっかり揃えやがって、このクソ中国人。