52 賢いお金の使い方 2

メイリンは貰った100万で持ち物を金色に染めた。
メイリンでこのレベル。だとすると、俺が心配していたのはコーネリアのほうだ。奴は一体どういう金の使い方をするのか。アメリカ人って金持ちはどういうイメージなんだろう?
多分、金持ちのイメージがそれぞれテレビやなんかで植えつけられてて、それにそった風に演出してくるはずだよね。とりあえず中国での金持ちっていうのは質素に演じるんじゃなくて、派手に、キンキラキンに演じる事はわかった。
と、その時。
教室がどよめいた。
みんな窓のほうに近づいて校門の当たりを見ている。
嫌な予感がするぞ…。やっぱりコーネリアか?
俺も窓に近づいてみる。
校門のところにやたらと胴体の長い車が止まっている。これはリムジンって奴じゃないの?ハリウッドスターとかが発表会で乗り付ける奴だよね。そんで、大抵そういう時は赤の絨毯が出てきて…。
「おい、絨毯が敷かれはじめたぞ!」
誰かが叫んだ。
絨毯だ。
真っ赤な絨毯が校門から入り口までダーーーーーーーーーッっと敷かれて、リムジンのドアが開く。すると、大音量で音楽が流れ始める。これは聞いたことがあるぞ。初音ミンクの「世界で一番お姫様」だ。
コーネリアが黒のドレスで出てきた。
これコーネリアだよね?
こんなアホな事する奴はコーネリアぐらいしかいない。
隣の男は誰?なんかハリウッドスターみたいな顔つきの外人がいるぞ。こいつエキストラ?絶対エキストラだよ。
その男に手を引かれて「世界で一番お姫様」を歌いながら、そして踊りながら、コーネリアは絨毯の上を歩いて行く。
確かに可愛い。コーネリアが2次元を模倣して作られた事もあるからこの世には存在しないレベルの美が彼女にあるのは判る。しかし、究極にバカだ。
「ふん、バカが」とメイリン
いやいやいや、お前が言うな!
「うわ、来たぞ!ヤバい!こっちに来た!」
教室がざわめきはじめる。
明らかに「世界で一番お姫様」の曲が俺達のクラスに近づいてくる。まぁ分かってるけどね。俺は廊下のほうに顔をのぞかせると、案の定そこに赤い絨毯が敷かれてあるのを見てちょっとうんざりした。
そして曲が終わる頃に教室に知らない人達がカメラを持ってやってくる。こいつらはマスコミなのか?マスコミまでエキストラかよ!
教室のドアが開き、コーネリアが登場するとパシャパシャパシャとマスコミ(パパラッチ達)がコーネリアを撮影し始める。そこに英語で何かしらのコメントをしてて、まるでハリウッド映画で主演女優賞でも取った後のようなインタビューがされてる。意味が分かんないよ!
コーネリアが椅子に座ろうとすると、隣に居る男性が椅子を引いて彼女を導く。そして心地良く椅子に腰を掛けると、これまた隣にいる男性がシャンパングラスを用意して机の上に置く。そこに注がれるシャンパン。意味が分かんないよ!
「コーネリア、これどうしちゃったの?」
俺が近づいて話しかけてみる。
ナノカとユウカもやってきて、「なんだかスターみたいね、凄い」と褒めてる。それは褒めてるのか?本当は「なんだかスターみたいね、凄い(バカっぽい)」って言おうとしたんじゃないのか?
でもコーネリアは俺達と話そうとせず、隣の男に耳打ちされてる。これもしかして翻訳されてるのか?おいおい!日本語判るだろうが!!その後も、英語で隣の男に耳打ちするコーネリア。それから男は、
「アリガトウ、ト言ワレテイマス」
「なんでやねん!」
俺は思わずツッコミをいれてしまった。
と、その時だった。
俺の背後に気配がして、なんか複数の図体のデカイ黒人(スーツ着用)が俺の腕を掴んで動けなくする。
「な、ちょっ、何してんのこのおっさん達」
よく見ると黒人の袖には「SP」の文字が。
おい、こいつらコーネリアのSPなのかよ!アホ過ぎるだろ!