51 メイド・イン・ヘヴン 7

「おねぇさまぁぁァ!!」
メイが泣きながら走ってきてジャンプし俺に抱きつく。
「重い…てば」
「申し訳ございません、メイが、メイが悪いのですゥ…」
「いやいや」
「こんな危険な目に合わせてしまって…うぅ…一体どうすれば、あぁ、もうこれは身体で払うしかありませんわ」と言いながらメイが服を脱ぎ始めるので俺はその手を止めて「まてまてまて」と言う。
もう太陽の光は上がって、そして警察が屋敷を取り囲んでいた。
後で分かった事だけど、メイド長のおばはんは警察に捕まったあとは取り調べの中で包み隠さず全てを暴露した。もちろんそうだ。主犯じゃないのだから捕まってしまえば後はどれだけ自分が悪くないのかを警察に説明するだけだ。
メイの叔父の息子は事業が失敗し資金のやり繰りに困っていた。
会社を立て直す為に父親の遺産を頼りにしていたのだが、そこでメイと彼の父親が仲がいい事を気づいた。しかし、それはただの親戚としての関係だった。決して珍しくもない、ごく普通の家庭の、ただの親戚としての関係。メイの叔父は財産を決してメイに渡すつもりなどなかった。しかし、父親の遺産を頼りにしていた実の子は親が遺産をメイに相続させるのではないかと恐れていた。
そして父親が書いた遺言がないか、遺言が無ければ書いていないかを監視した。
親は子を信じて、子は親を信じていなかった。
二人の間に何があったのかは部外者である俺達にはわからない。もし叔父がメイに財産を渡すつもりだったのなら、まだハッピーエンドだったのかもしれない。この事件の後、彼ら親子は本当に親子では無くなってしまった。と俺は思う。
「キミカちゃん!いくらなんでも過剰防衛よ?足を切断するなんて」
あー、やっぱりそれ来ましたか。
ミサカさんが俺達にそう言いに来ることはミサカさんをここに呼んだ時から予想していた。でもそこは俺とコーネリアがメイリンを指さして、
「切ったのはコイツ」
と声を揃えて言った。
「手も斬るべきだったか?」
メイリンは悪ぶれるまでもなく言う。
「っていうかさ、メイドアンドロイドにボウガンの集中攻撃を受けたんだよ(見切ったけど)あの状況で正当防衛だの過剰防衛だの言っている場合じゃないよ。あたしたちは殺されるところだったんだよ?」
「ソウデーッス!メイリンナンテ怖レテオシッコチビッテマシターッ!」
「ちびってない」
「Oh…折角私ガフォローシタノニ…」
「フォローになってない」
ミサカさんは俺達を見てからため息を付いて
「ま、まぁそうね…しかたないわ」
と言う。
「おねぇさま!そんな危険な目に!!あああ…わたくし、もうなんて謝罪していいのやら…どうしましょう。とりあえず服を脱いで」
「だから脱がなくていいってば!」
結局、この一件で、屋敷の主人であるメイの叔父は俺達にお礼がしたいとの事で、まずはお金をくれる事になった。うーん…それはそれでどうなのかな、と思う。まぁ、金持ちだから金で解決しようとするのは理解できる。けどさ、金は人を狂わせる。特に貧乏人は狂う。やっぱりそれは金持ちにはわからないのかな?