8 軍病院 5

茂みを越えた先には小高い丘がある。見下ろす先には雄輝達が一度は運ばれてきた病院と思わしき施設があった。
君津は双眼鏡を青葉に手渡して言う。
「例の病気騒ぎがある1ヶ月以上前からあの建物は既にあそこにあったんだ。もう完成間近だったよ」
「偶然だろ?」
「どうだろな。とにかく、俺はここでずっとあの建物がどういう目的で建てられてるかを探ってたんだよ。建物の周囲には道路がなくて、ヘリポートだけある。そこへ建築資材を持ってきて組み立てていく様は圧巻だったぜ」
「それは軍が駐屯地を作る時にやるやり方と同じだな」
「だろ?」
「ここでずっとって、軍病院には行ってないの?」
「ああ、うん」
「それって…。え?君津は男から女になったのってここで?」
「ああ。さすがの俺もパニクったぜ。身体が女に変化していくもんな」
「すげぇな。そういう時は普通、病院に駆け込もうとするもんだぜ」
「身体が女になっていくのと、例の病院のヘリポートに村人が運び込まれるのが同時だったからな。興味はむしろそっちに行ってたよ。何が起きてるのかを理解するほうが先決だったんだよ、俺の中では」
「へぇ〜。んで、君津は女になった後に何か発見はあったのか?例えば…特殊な力が使えるようになったとか」
君津は青葉の顔をぽかんと見つめた。
「お前も使えるの?」
「お前もっていうか、ここに居る奴ら殆どが何かしらの力使えるよ」
「マジで?すげぇ。じゃあみんな視界を共有出来るのか」
「視界を共有?」
「あら…違うの」
「人それぞれで使える力が違うみたいだよ。それで視界を共有ってなんだよ?」
「なんていうか、俺が認識した人が見えてる景色を見る事ができるんだよ」
「テレパシー?」
「さぁ?」
「じゃあ、俺が見てる景色を覗き見て」
青葉がゆっくりと周囲の見て言う。
「いま鳥を見てるだろ」
「おお、凄いな」
「んじゃ、白石が見てる景色を見てよ」
青葉が突然白石をご氏名した。突然頭の中をまさぐられるような感覚に陥る雄輝。
「ん?」
君津が突然表情を曇らせる。
「どした?」
「ダメだ。見れない。出来る人と出来ない人があるのか」