8 軍病院 6

「それで君津はここで何が行われてるか監視してるってわけか」
話は続いているのに、君津はそれを無視して双眼鏡で再び軍病院のヘリポート周辺を観察している。何か動きがあったようで、それにあわせて微妙に双眼鏡の位置が動いている。
「双眼鏡で見なくてもそのヘリポートにいる奴等の頭の中をテレパシーで覗いて見ればいいんじゃないの?」
「ターゲットを目視で確認した後じゃないと使えないんだよ」
「ふーん」
このままそこにいても特に雄輝達にはメリットはない。「帰るか」などと誰かが言い、草むらで寝転がっている君津をよそに帰り始める一同。と、その時、君津は身を乗り出した。双眼鏡を握る手に力が込められているのは見て判るほどに。
「来た!やっぱり軍関係者がきやがったぞ!」
嬉しそうにそう言う君津。
雄輝達は足を止め、再び君津の横に腹ばいになる。
「軍病院だから軍の関係者が来ても変じゃないでしょ」
と佐藤が言う。
「軍病院っていうのは俺の予測だよ。でも本当に軍関係者が来た!」
「ほほぉ〜。その情報を週刊誌かなんかに出せば何か貰えそうないい情報なのかな?」
「シッ!」
君津は人差し指を立てて「黙れ」のジェスチャー
「とりあえず軍服姿の奴が誰なのか調べてみよう。隣にいる背の高い女の視界を覗いてみる」
と、君津が能力を使うように身構えた次の瞬間、
「あ」
と言って持っていた双眼鏡を草むらに落とした。
「どした?」
「目が合った」
「え?マジで?」