9 報復者 6

車は険しい山道を下っていった。
後部座席の男は窓から山道を見る。
「大丈夫、追い掛けて来てない。大丈夫だ」
追い掛けて来ているかどうかは透明なモノだから解るはずも無い。だがそう言う事で少しでも仲間の気持ち、自分の気持ちが和らぐことを望んでいるのだろう。
「畜生!かんべんしてくれ!畜生!」
「おい、まだ抜けないのか?!」
「街に入れば大丈夫だ…」
すすり泣く声、怒鳴る声、それを後に、運転手の男は焦りながらハンドルを切る。
「今真ん中あたりだ」
「真ん中ってなんだよ!随分走ったぞ!」
「今のバス停があったろ!あれが真ん中ぐらいなんだよ!」
ドン。
突然車が鳴る。それは車の天井からの音だ。
男達は一斉に天井を見る。そこは少し凹んでいた。
「な、なんだ、何が」
突然そこから光る刃が出てくる。それは円を描くように車の屋根を切った。
「ギャァァァァァァ!」
叫び声。
そこにいた男達は全員半狂乱になりながらその刃から逃れた。
カンズメの蓋が開くように、ぎりぎり音を立てて開く車の屋根。開かれた屋根からは何も見えない。木々の景色が高速に通り過ぎるだけだ。そこに何か白いものが放り込まれた。